雨の降る日曜は

せっかくの日曜日、昨日の二日酔いの余韻もすっかり消えて、体と精神は伸び上がるくらいに元気なのに、あいにくの雨。時に天の水瓶をひっくり返したような大雨に転じつつ、一日中降り続く嫌な天気です。
こんな日にふと思い出すのが、橘玲著「雨の降る日曜は幸福について考えよう」という本。

雨の降る日曜は幸福について考えよう Think Happy Thoughts on Rainy Sundays

雨の降る日曜は幸福について考えよう Think Happy Thoughts on Rainy Sundays

タイトルは何だかほんわかとしていて、幸福についてのエッセーか何かだと思われそうですが、著者独自の自由主義経済学的な観点から、人生設計やお金について書かれた本。
人生を幸福により良く生きるには、知っておかなければならない社会や経済の仕組みがあります。それを、クールな視点で一つ一つ分析していってくれる。あまり現実的な視点で自分の人生設計を考えたことがなかった人にとっては、けっこう衝撃的な内容を含んでいます。
お金は人生を必ずしも幸福にはしないけれど、幸福な人生の一つの要素として、「お金」があるというのは事実。それを冷静に受け止めて自分の人生を設計すれば、少しは幸福に近づける。そうした著者の考えには、共感するところが非常に多くありました。

とはいえ今日はこの本ではなく、平野啓一郎著「葬送 第一部」を手にとって大半の時間を過ごしました。
葬送〈第1部(上)〉 (新潮文庫)葬送〈第1部(下)〉 (新潮文庫)高校の世界史の授業でしか接したことのない19世紀フランスの世界。しかも物語は美術が苦手だった僕にはほとんど馴染みのなかった画家 ドラクロワの視点から多くが描かれていきます。
ストーリーそのものよりも、寧ろ登場人物の口から語られる、あるいは心中で語られる芸術論、歴史認識といったものに心が動かされることが多いという印象。日本人作家の作品でありながら、19世紀ヨーロッパという時代に生きた人の思考を詳細に描き出し、それが読んでいる方の頭にも次第に浸透してくる感覚でした。
登場人物のほとんどが病を得て元気がない、という点が、雨の日曜日を余計に沈んだものにしてしまいそうで少し怖い・・・。