投資家の視点

会社帰りの夜11時過ぎに立ち寄った本屋でたまたま見つけ、思わず買ってしまった本です。

冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見 (日経ビジネス人文庫)

冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見 (日経ビジネス人文庫)

あのジョージ・ソロスとともにヘッジファンド「クォンタム・ファンド」を率いて世界市場を駆け抜けたのち、「世界を見て回りたい」と言ってあっさりと引退してしまった元・投資家。1回目はバイク、そして2回目は黄色いメルセデスのオープンカーで、3年にわたる世界一周旅行を実現します。その2回目の冒険旅行(奥さんと二人で行った)について書かれたのがこの本。
この本の最大の魅力は、世の中に何冊も出ている単なる世界旅行記に終わっていないところ。訪れる国・地域で出会った人々や経験について書かれているのはもちろんですが、その国や地域を見たジム・ロジャーズが投資家の視点で何を感じ、考えたのかということが、紙幅の大半を使って記されています。
経済・政治の状況がどうなっており、そこに暮らす人々がどんな思いを持っているか。今後その国はどうなっていくか、自分なら投資するか・しないか。なぜ投資するか・しないか。
漫然と旅をしていくのではなく、常に何らかの仮説をもってその国に臨み、実際の出会いや経験を通じてその仮説を検証していくような営みが、彼の旅行の間には繰り返されています。そして、彼は実際にいくつかの国に投資をしていく。驚くべきはその視点の鋭さ、オリジナリティ、そして的確さ。彼が旅をしたのは2000年までの3年ですが、その後に彼の予想通りの発展・衰退を遂げた国がいくつも出てきます。「予言の書かと見紛う」という訳者の言葉の通りといったところ。

先日ここで紹介した「ナショナルジオグラフィック プロの撮り方」という本も、漫然と旅をすることを戒め、熱心さを強調していました。人間が一生にできる経験の中で、旅ほど刺激的かつ示唆に満ちたものはありません。そこから何を得ようとするか、姿勢の違いが果実の違いを生み出す気がしてなりません。
夏休みシーズン到来で旅をすることの多くなるこの時期、ぜひこうした思いを心に留めておきたいものです。