野球と経営

 先日ご紹介した、星野仙一氏の本の中に、「タイガースの問題点」という項があります。プロ野球チームの運営はまさしく経営であり、強いチームけつを作れないのは「経営的視点・ビジョンの欠如」が根本原因であるという考えには納得させられます。ISBN:4167679450:image

結論から言うと、阪神に行って胸を衝かれたのはその無知・無為・無策だった。(中略)まず、その電鉄会社としての本質というようなものを考慮しなければならない。簡単に言えば2本のレールを敷いて車輌を走らせ、たとえば梅田から三田まで時間通りに客を運ぶ商売であり、なによりも大事にするのが安全であり、規定であり、正確なスケジュールなのである。電鉄会社としてそれはもちろん当然なことなのだが、その電鉄産業と興行事業である球団経営とを一緒くたに考えてきたのが間違っている。

本社のVIPが代わる代わる甲子園球場にやってくる。(中略)するとほとんどの人が、「いやー、よかったですなぁ、昨日のゲームは。○番の××がいいところでタイムリーを打って。いやー、面白かったね、ホンマ」といったりする。(中略)わたしがいいたいのは本社のVIPたちはみんな、自分たちはそれぞれ経営者であるはずなのに、ひとりひとりがファンンになってしまっているということだ。
(中略)球場に足を運んでスタンドを見渡し、試合運びを見ていれば当然経営者の感覚に響いてくるものがある。チームはどうすればもっと強くなり、魅力的な選手を育てたり、面白い試合を見せられるようになるのか。組織としてどうすべきなのか、興行とすればどうしたらいいのか。(中略)これだけ大勢のファンをどう喜ばせてサービスもよくし、それを仕事や事業にどう結びつけていけばいいか。経営者としての感覚、問題意識、その才能に響き、感応するものが必ずいくつかはあるものではないだろうか。
(中略)ひとことでいえば、「ビジョン」というものを持っていないのである。わたしはこれがタイガースの前進を妨げ、タイガースファンに対する大きな迷惑になっていると思っている。

引用が長くなってしまいましたが、「経営感覚」についてプロ野球監督が語るというのが興味深い。組織を率いる者に求められる資質・姿勢は、それがビジネスであれスポーツであれ、共通する要素が数多いのだということを改めて気付かされます。