細かいことがわりに大事

 学生時代に読んで以来手にとっていなかった村上春樹ねじまき鳥クロニクル」を読み返しています。ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)
 作者は、この作品を書くために海外に居を移し、1年以上の歳月をかけて書き上げたのだとか。そういう話を知るにつけ、書物というのは小説であれ何であれ、作者の人生の一部(ときとして大部分)を注ぎ込んで作り上げられるものなんだという思いを強くします。
 「ねじまき鳥」の中に、こんな文章が出てきます。
 「家に帰ったらすぐにシャワーを浴びるのよ。まず最初にシャワー。わかった?そして綺麗な服に着替えるのよ。それから髭も剃りなさいね。」「そういう細かいことがわりに大事なのよ。ねじまき鳥さん。」
 すっかり心が混乱してしまった「僕」に対して、不思議な少女がかけた言葉です。
 疲労と混乱に苛まれた時、体を清潔にして鏡を見る。こんな些細な行為が、自分の正常な心の働きを取り戻すのに効果的だったりします。