ボーダーレス経済

 昨日に続いて、インターネット関連の話題。
 かの大前研一氏はかねてから、私たちの生きる現代の世界は①実体経済、②金や情報が国境を越えて自由に流通する「ボーダーレス経済」、③インターネット等さまざまな情報技術から生じた「サイバー経済」、④自己資金の100倍・1000倍というマルチプルの資金が動く「マルチプル経済」という四つの経済空間によって構成されていると説いています。大前研一「新・資本論」―見えない経済大陸へ挑む
 そして、こうしたまさに「複雑系」の世界を生き抜いていくには、従来の「旧大陸」の世界観に囚われない新しい視点で世界を眺め、自らの頭で考える必要がある、と。そのための第一歩として我々に求められるのが、上記4つの経済空間が一体どんなものなのか、を「まず理解する」というステップです。

 昨日紹介した「ウェブ進化論」を読んでいても痛烈に感じるのは、今まさに起こっている世界経済の変貌過程を「認識しているか、していないか」の差が、ある人(僕も含めて)の今後を大きく左右するだろう、ということ。「認識している人」と「していない人」の間には、普段生活しているだけでは見えてこない巨大なクレバスが存在しているような気がしてならないのです。

 例えばGoogleの展開するAdSenseというビジネス。個人や企業のホームページに、そのページの内容に沿った広告をGoogleが自動で選定して貼り付け。広告を通じて購買が発生したら、広告主から手数料が支払われるという仕組みです。Google AdSense
 ホームページの内容を自動で解析し、それにマッチした広告を自動選定するというテクノロジーも大したものだけれど、驚くべきはそこに秘められた「ボーダーレス経済」の香り。そう、このAdSense、どこの国のホームページだろうが、広告主から支払われる手数料は一定なのです。あなたは中国のサイトだから、支払う手数料は○分の1なんてことはない。どんなに貨幣価値の低い発展途上国の住人であっても、多くの人を集客できるサイトを構築し、そこから購買が生まれれば、米ドル建て(たぶん)の手数料が、アメリカのサイトに対してと同様に支払われる。既に一部では、AdSenseによる収入だけで十分に豊かな生活を営んでいる途上国の方もいらっしゃるのだとか。そこには最早、国家の壁や貨幣価値の壁なんて存在しないというわけです。
 これだけでも、十分に革命的と呼べる変化が起こっていることがわかります。そして、ネットの世界は日進月歩以上のスピードで驀進し続けている。これから先に何が起こり、それが一体どういう意味を持つものなのか。鋭い視野を養う必要に、私たち一人一人が迫られていると思わざるをえません。