ムエタイ

初めて生で見る格闘技の試合となったタイでのムエタイ観戦。想像していた以上に白熱し、興奮してしまいました。とはいえ、僕以外の観客の皆さん(特に地元に方々)の興奮度は、僕のそれとは比較にならないくらいに激しい。試合結果をギャンブルの対象にすることが公認されているだけあって、生活をかけて?応援している人もいるんじゃないかと思うくらいでした。
その夜予定されていたのは8試合。昨日ご紹介した少年による試合が2試合程度。その後はウェイト順に試合が組まれ、メインイベントは最後から2試合目。

これ、浮かれて遊んでいるわけではありません。試合の前には必ず、悪霊を追い払うための踊りが対戦者二人によって行われるのです。まずはリングを一周し、その後は写真のようにリング中央部付近で祈りを捧げるかのような踊りが数分間、民族音楽に合わせて披露されます。

仏教に根ざした敬虔な宗教観を持つタイの人々。荒々しい戦いの前のひとときの心の静寂なのでしょうか。

いざ試合が始まると、駆け引きなしの真剣勝負。ボクシングとは異なり、キック・ヒザ蹴り・肘打ちありのルールということで、アクロバティックな技の数々が繰り出されていき、観客のボルテージもあっという間に上がります。もちろん、KOで試合が決まることが非常に多い。観戦した8試合のうち、半分以上がKO、中には劣勢と思われていたファイターがハイキック一閃、逆転KO勝利という試合もありました。毎試合、激しくぶつかる肉と骨の音が会場にこだまし、その度に、「ウオーイ!」という歓声が湧き上がります。

ショービジネスの色彩が強くないせいでしょうか、登場する選手たちの表情も素朴。派手なパフォーマンスや照明、横断幕の応援もないけれど、選手の背中から語られる言葉のようなものを感じることのできた一夜でした。