国策捜査と外交官の責任感

フォトリーディングを使わずに普通に読みました。筆者の筆力と驚異的な意志力、そして恐ろしいまでに克明な記憶力に圧倒される一冊でした。

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

バッシングの嵐に沈んだ鈴木宗男議員と、彼と当時の日本政府の命を受けて日露平和条約締結に向けた活動を秘密裏に進めていた筆者について、逮捕・裁判での有罪判決でいちおうの終焉を迎えるまでの記録が克明に綴られていました。
「時代のけじめ」として、従来型の古いタイプの政治家や官僚機構を葬ろうと国策捜査を展開する検察と、「国益」を何よりの価値として日露平和条約に向けた歩みを守ろうと奮闘する外交官である筆者。どちらが正しく、どちらが間違っているという黒白の判断など到底できない世界。
僕たち一般市民には縁遠い話と片付けることもできますが、こうした世界で真摯に自らの使命を全うしようと働く人々の姿は心に残ります。
筆者が描く拘置所内の生活ぶりなども興味深く読めました。