かけがえのない人間

書店での衝動買いシリーズです。ここのところ、人間の心理やモチベーションの理論に興味を持っているため、その一環です。

かけがえのない人間 (講談社現代新書)

かけがえのない人間 (講談社現代新書)

著者が懸念するのは、最近の日本人に特に顕著な「自己評価の低さ」。特に若者に多いといいますが、実際には中・壮年層にも広がっている症状である気が僕はしています。少なくとも、朝の通勤電車に揺られる人々の表情から読み取る限り、自分を心から信頼して自信をもって仕事場に向かっている人というのは少ない。
こうした現象は何も今に始まったことではないのかもしれませんが、昨今の職場環境におけるうつや病気による退職者数が増加していることを考えると、ビジネスパーソンを取り囲む環境は以前よりハードになっていると考えたほうがいいでしょう。
自分を信頼できない、自分の可能性を信じることができないという状況に追い込まれてしまっては、人間は自分の人生を全うすることなどできません。それでは、どうしたらそんな状況に陥らずに、前を向いて歩いていけるのか。
筆者は、自分の「かけがえのなさ」に気付くこと、が鍵だと言います。自分が交換可能な存在ではなく、一人の人間としてかけがえのない存在であることを自覚することだと。
この表現は曖昧で少しわかりにくいけれど、言い換えるとそれは「自分を評価するのは他人ではなく自分。また、評価というのは自分の成長のために活用すべきものであり、評価そのものに一喜一憂するものではない」ということになります。そうして自己成長を進めた先にこそ、「かけがえのない自分」が立ち現れてくる、と。
こうして書いていて思い出すのは、GEの前会長ジャック・ウェルチの言う「Victory」と相通ずるものがあるということです。彼は常に「勝利」の大切さを説きますが、それは決して他人に対しての勝利ではない。自分自身が達成したいと願う目標を明確に設定し、それを努力の末に達成したときにこそ得られるのが「Victory」なのだというのです。
他人との比較の中で他人からの評価を軸に育ってきた私たちには、上記のような「Victory」の感覚は理解しづらいものかもしれません。また、自身の目標といわれてもピンと来ないという人も多いはずです。だからこそ、意識的にそうしたことについて考え、書き、思いを巡らす機会を作らなければならないと思います。恥ずかしがらずに、自分の目標、自分の勝利について考えてみる。たまにはいいことだと思いませんか?