Outliers

書籍の紹介2冊目は、マルコム・グラッドウェル著「Outliers」です。Kindleで原書を読んだのでこのタイトルですが、邦訳も出版されており、こちらは「天才!成功する人々の法則」となっています。

Outliers: The Story of Success

Outliers: The Story of Success

天才!  成功する人々の法則

天才! 成功する人々の法則

原書のタイトルである「Outliers」というのは、統計学でいう異常値のこと。平均や標準偏差を算出する際に無視しなくてはならないくらい、平均値から飛びぬけている数値のことです。グラッドウェルは、一般的に「天才」と呼ばれ、平均的な人々とは比べられないほどの能力を発揮していたり大きな成功を収めたりしている人たちを指して、この表現を使っているんですね。
邦訳のタイトルには天才というk言葉がついていますが、本書のメッセージは「天才など存在しない」あるいは「成功した人は天才だから成功したのではない」というものです。数多くの有名人が取り上げられていますが、ビル・ゲイツにしてもスティーブ・ジョブズにしても、あるいは一流のスポーツ選手にしても、彼らが成功を収めたのはその才能が理由ではない、と。
グラッドウェルは、取材と調査分析に基づく事実を積み上げて上記のメッセージを論じていきます。そして、彼ら成功者を取り巻く時代や環境といった要素が大きな鍵を握っていることを示唆します。もちろん彼らは人並み以上の知性と、人並み外れた情熱を持っていました。しかし、それだけでは成功には到達できなかったのだと結論づけるのです。
この本が僕自身に発したメッセージは一言でいうと、以下のようになります。

人並み外れたけた外れの情熱をもって物事に挑戦することは大切だ。しかし、それを後押しする環境という”追い風”をも手にしない限り、成功はおぼつかない。

帆船に例えると分かりやすいかもしれません。情熱や努力というのは「帆」です。そして、時代背景や環境というのは「風」ですね。風の後押しを受けるためには大きく帆を広げておく必要がある。しかし一方で、どんなに帆を広げていても、風が吹いていなければ帆船は前には進まない。
ある事業にどれほどの情熱と努力を注ぎ込んだとしても、それが時代の動きに合致したものでない限り、目指しているような事業の姿を手に入れることは難しい。逆に言えば、今そして近い未来の海上にどんな”風”が吹くのかを敏感に捉えることができれば、そこに人一倍の情熱を注ぎ込むことで大きな成果をあげることができるということでしょう。
ただ、本書ではそのように”風”を読み切って成功したという事例は登場しません。成功者は皆、無我夢中で努力を重ねていく中でいつしか知らず知らずの間に風を掴まえているのです。大きく帆を張るということ、つまり人並み外れた情熱を注ぎ込むということは、そういうことなのかなと思います。時を見て「よっこらしょ」と行動するようなものではなく、夢中になって帆を張っていたところに、ふと風が吹いてくる。
Kazuteru Kodera