「神」の歴史

正月休みの間に読もうと実家に持ち帰った本のうちの最後の一冊を読み終えました。

波乱の時代(上)

波乱の時代(上)

アメリカ連邦準備制度理事会FRB)の前議長、「市井のエコノミスト」として市場心理を的確に把握した金融政策運営で時に神格化されたセントラルバンカー、アラン・グリーンスパン氏の自叙伝です。上巻が自叙伝的な内容、下巻が今後の世界経済に対しての論述という役割を担っているとのこと。今回読み終えたのは上巻。
ニクソン政権から30年あまり、継続的にアメリカの経済政策運営に関わり続けた、まさに「歴史の証人」と呼ぶべき人物。時々の金融政策決定の判断に至る軌跡はもちろん、アメリカ政権内の微妙なやり取りや大統領の人物像まで、克明に描き出されています。
経済への視点をどのように構築するかという示唆はもちろん、読み物としても十分に手ごたえのある一冊でした。
印象深いのは、彼の代名詞ともなった抽象的な議会証言の裏に秘められていたのが、エコノミスト時代に徹底的に鍛え上げた定量分析=データに裏付けられた仮説検証 であったという点。ブラックマンデーの危機に際して、GNP(当時はGDPではなく、GNPが国家の代表的経済指標でした)を週次でウォッチする仕組みを作り出したり、戦争に際しての経済への影響を産業連関分析を応用した手法で算出したりと、データ重視の姿勢が非常に強い。
曖昧模糊とした発言で市場参加者を煙に巻き、それでいて市場心理を捉えた金利誘導で高い評価を得た姿とは一線を画す、興味深い側面を見ることができました。