日誌をつける、判断を記録する
愛読しているブログの一つに、「タイム・コンサルタントの日誌から」があります。その新年早々のエントリーを読んで、改めて業務日誌をつけるということの大切さを再認識しました。
これまでは、主にEvernoteをそのツールとして、仕事の資料やミーティングのログなどを保存することで、後から振り返りができる環境を作ってきたつもりだったのですが、これが今一つ価値を発揮しているという実感がありませんでした。もちろん、「あの時の打ち合わせで何を話したんだっけ?」といった際の備忘録としては役に立っていますが、「結局のところ自分はどういう判断をしたのか(=どういう行動をすると決めたのか)」が残されていないため、現在発生している状況が、自分のどのような判断によってもたらされたものなのか、振り返ることができない。
そんなもやもやを抱えていたのですが、上記のブログに触発されてスタートさせた「業務日誌」によってずいぶんとクリアになってきた気がしています。具体的には、1日の仕事の終わりに、その日を振り返って各イベントごとにどのような判断をしたのか、自分の思考プロセスも含めて結論を明記しておく。また、その際に利用したり作成した資料があれば、それも添付しておく (相変わらずツールとしてはEvernoteを使っています)。
メリットの一つは「短期の振り返り」。1日の振り返りという作業が必ず毎日発生すること。打ち合わせが立て込んだ日などは、自分でも意識しないうちにいくつもの意思決定をしているもの。それを、落ち着いた環境で振り返り、見直しをする機会を作ることができる。
二つ目のメリットは、「長期の振り返り」でしょう。後日、「当時はどうしてこの判断をしたのか?」という点が重要な意味をもったとき、適切な資料とともに振り返ることができる。(まだ僕の場合はレコードがたまっていないのでそこまではできませんが・・・)
上記のブログエントリーにある通り、この種の習慣が価値を持ち始めるには、100日くらいの蓄積が必要。まずは「短期の振り返り」のメリットを実感しながら、毎日続けていきたいと思います。
天正少年使節団は海外事業における「OKY」への有効な打ち手
海外で駐在している日系企業の駐在員の方とお話していると、「OKY」という話を耳にすることがあります。駐在している者同士、時に話題は双方の日本本社の悪口になってしまうこともあるもの。その中で、「OKYですよね、ホントに。」といった使われ方をします。「OKY」とは、「お前(O)、ここに来て(K)、やってみろ(Y)」。現地の状況を知らない本社の偉い人から、「○○拠点はいったい何やってるんだ!」といった現状無視の叱責を受けたときなどに、駐在員が心の中でつぶやくセリフです。
海外での事業展開においては、本国(日本)での経験からはとても想像できないような障壁が存在したり、思わぬところで足をすくわれたりするもの。駐在員はたいていの場合、本社からは見えないそうした障壁を乗り越えるのに一生懸命になっている。しかし、そんな日々の苦労は本社からの評価には含まれていないことが多く、そこにギャップが発生してしまうんですね。
いま読み進めている「クワトロ・ラガッツィ」という本は、戦国時代に日本からローマ・カトリック教会の総本山・バチカンに送られた4人の少年使節団の物語ですが。そこにこの「OKY」を打ち崩すヒントがありました。
OKY打倒策の立案者は、イエズス会の巡察師 バリニャーノ。日本史で少し耳にしたことのある使節団なのですが、いったい何の目的で?となると僕も知りませんでしたが、これが実はOKY対策だったのです。
バリニャーノ(イタリア人で、高い学歴と経歴を持つヨーロッパの知的エリートでした)は、日本に来て、日本のハイレベルな文化と日本人の高潔さ・賢さに驚嘆します。そして、「この日本こそ、カトリックの新市場開拓にとって最重要拠点となる地域だ」と確信します。しかし、アジア人を「野蛮人・半未開文明(semi-civilized)」と見下している当時のヨーロッパ人主流派の人々は、そんなバリニャーノに懐疑的。何とかそうした認識を改めて、日本の布教活動により多くの資源(人材・資金)を獲得したい。そんな思いから生まれたアイデアが、「日本の優れた武士階級の人材を使節としてローマに派遣し、そのレベルの高さを見せつける」という少年使節団だったというわけです。
バリニャーノの熱心な本社(バチカン)への情報発信と手の込んだ演出、また少年使節団メンバーの優れた資質もあり、使節団に謁見したローマ教皇は新市場における布教の成功に感激の涙を流したといいます。(残念ながら、使節団が帰国する頃にはすでに秀吉の世。キリスト教は禁止され、その後日本のキリシタンは非常な苦境に置かれることになるのですが・・・。)
こうした天正少年使節団をめぐる一連の動きから導かれるOKY対策は、以下の通り。
- 【見せる】本社の人間に、現地をつぶさに見る・体験する機会を作る。できれば数週間以上の期間で。(キーパーソンとなったバリニャーノのポジションは「巡察師」。日本に数か月滞在し、本部に布教活動の状況を報告する役割でした)
- 【伝える】現地の状況を、つぶさに(良いことも悪いことも)本社に報告して現状把握を促進させる。(バリニャーノは多くの書簡をイエズス会の総会長らに送り、日本人のすばらしさ、日本の政治の状況、布教活動の難しさなどを伝えていた)
- 【驚かす】現地の優秀なスタッフを本社に派遣する機会を作り、その有能さや意識レベルを本社に驚きとともに印象づける。(少年使節団のメンバーには、特に優秀かつ物腰・雰囲気の秀麗な者が選ばれた)
3つのいずれもが、海外展開する多くの企業が実際にやっていることではあり、特に目新しいものはないかもしれません。それでも、これらを「徹底して実行する」ということが、海外拠点の成長と発展には必要なのだと思います。
クアトロ・ラガッツィ (上) 天正少年使節と世界帝国 (集英社文庫)
- 作者: 若桑みどり
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お金をどう使うか
今年のお正月、ムスメ(5歳・年中)は初めてお年玉で買い物をしました。昨年までのお年玉は、本人に特段ほしいものがなかったこと、金銭感覚というものがなかったことなどもあり、ダイレクトに銀行口座へ。そして今年。足し算や引き算が何となくできるようになり、またお金というものの意味あいも少しわかってきた頃合いということで、「お年玉を握ってお店へGO」というのをやってみました。
正月2日、元旦に入手したお年玉全額を持ってトイザらスへ。僕が興味を持ったのは、何を買ったかももちろんですが、どれだけ使うか、ということ。結論から言うと、彼女は持っていた金額のすべてを使いました。ほとんどお釣りすら残らないように、すべて。(ちなみに、2日に訪問した親戚からもお年玉がもらえる予定だったことは本人は知らなかったので、「これを使い切ったら1年間、誕生日などのイベント以外では何も買えない」という条件で意思決定をしてもらいました。)
ここで、全部使ったからGoodとかBadとか言うつもりもありません。ただ、ムスメが「使わない」・「一部使う」・「全部使う」という複数の(しかもどれだけ という程度を伴う)選択肢の中から自分で意思決定をし、しかもその態度に微塵も逡巡がなかったということは、僕には印象深く映りました。
意思決定には必ずトレードオフがあります。それはお年玉の使い方であろうとビジネス上の投資だろうと全て同じ。何かを選択したら、何かを諦めなければなりません。そして、自分の下した意思決定には常に認知的不協和が発生するもの(ああしておけばよかった、とか)。そうした状況といかに上手に付き合って、意思決定をしていくか。これは子どもの頃から経験を積んでおくに越したことはない、大切なプロセスだと思うのです。
お正月読書
明けましておめでとうございます。世間は今日から仕事始めというところが多いようですが、僕の日本の勤務先は今日まで休み。自動車業界はおおむねそのようですね。一方、僕のタイの勤務先は今日が仕事始め。どちらに所属しているのか不明確な自分はどちらのカレンダーにも縛られず、気ままに仕事をしたりブログを書いたりしている次第です。
さて、この年末年始は久しぶりに自宅で過ごしました。ヨメの出産が間近ということで遠方に出かけることはできない(産院から1時間以上離れるのはやめよう)こともあって、年末年始は主に自宅・両親宅・親戚宅で過ごすという日本らしい年末年始の姿に。
この休み中、ムスメと遊んだり、親戚と酒宴を囲んだりといった時間以外は、主に読書をしていました。日本では紙の本が手軽に手に入る(海外にいるときにはKindle版のみ)ので、かねてからAmazonの「ほしい物リスト」に入れていた紙の本をオーダーし、また本屋で思いつくままに購入し、手に取りました。未読了のものも含めて、以下の通りです。
経済小説・歴史小説として文句なしに面白かった。幕末の開国に際して設定された為替レートをめぐる米英駐在代表と幕府との駆け引きたるや・・・。
クアトロ・ラガッツィ (上) 天正少年使節と世界帝国 (集英社文庫)
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グローバル化を志向するローマ・カトリック教会が中国・日本という高度な文明に出会い、そこでいかに事業を拡大・成功させようとしたのか?という視点で読んでいます。また、当時のスターである織田信長の思考を追っていくといった読み方も楽しい。
講義録をかなり端折って書籍化しているので、わかりにくいですが、資本論というものを読んだことのない僕のような人には、入門書というかきっかけづくりにはなるかな。
- 作者: マルグリット・ユルスナール,多田智満子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2008/12/16
- メディア: 単行本
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ライフネット生命の出口会長の愛読書ということで、絶版ながら中古で購入。読み始めたばかりですが、静かに一人で読むべき本ですね。ローマ五賢帝の一人ハドリアヌスの晩年の自伝という体裁で書かれた小説。
真山仁という作家のファンで、彼の作品はすべて読んでいるのですが、そのデビュー作(共著)です。大手生保の生き残りをかけた葛藤を描いた小説ですが、僕自身が就職活動をしていた当時の出来事ということもあり、生々しかったです。