外国人起業家を増やすには

先日こちらで紹介した「コンビニ外国人」という本の中で、個人的に興味を持ったテーマが「外国人起業家」です。

日本に在留する外国人の中に、ごく僅かではあるものの「経営・管理」のビザを保有し起業している人々がいることが紹介され、彼らが起業に至った経緯や途上で遭遇した困難やそれをどう乗り越えて行ったのか、といった事例が紹介されています。

外国人が日本でビジネスをはじめるには、日本人より多くのハードルを越えなければならない。  まずはビザの変更だ。通常、起業を目指す外国人が「経営・管理」の在留資格認定を受けるためには、入国管理局へ申請する前に事務所を開設しておく必要がある(ユイさんの場合は前もって店舗を借りていなければならず、物件の契約には日本人の保証人も必要だった)。さらに常勤の従業員を二人以上雇用するか、資本金額または出資総額が五〇〇万円以上なければならないなどの要件が加わる。  そのため日本に長く住む外国人でも「経営・管理」の在留資格を持っている人は少なく、全体の1%未満に留まっている。ましてや日本に滞在歴のない外国人が日本で起業してビジネス展開することはほとんど不可能に近かった。

この文章を読むと、いかに外国人が日本で起業することが困難か、容易に想像がつきます。ただでさえ外国人が不動産を借りたり銀行から資金調達をするのは困難である中で、このようなビザ要件が加われば、おそらく起業の地として日本を選ぶ外国人はほとんど現れないでしょう。

それらを打破する取り組みとして、以下のような事例も紹介されます。

二〇一四年以降、〝アジアのゲートウェイ〟を標榜する福岡市など一部の国家戦略特区で、ビザの取得要件を緩和する「スタートアップビザ(外国人創業活動促進事業)」制度がはじまった。  福岡市は、国籍を問わずに起業を目指す人を支援する施設「スタートアップカフェ」を官民一体で立ち上げ、保証人のいらない事務所物件の紹介や専門知識を備えた士業の仲介などを通じて、外国人起業家を支援しているのである。  万が一、相談時に「経営・管理」のビザを取れる要件が整っていなくても、創業活動計画書などの確認をもとに市と入国管理局が審査をすることで、六カ月間の「経営・管理」の在留資格が認められる。「経営・管理」のビザを正式に満たす要件は、六カ月間で整えればよく、創業する外国人は事業の準備をしながら手続きを進めることができるというものだ。  

依然として戦略特区の制度を活用した一部地域の事例であるとはいえ、こうした取り組みが拡大してくことがとても楽しみです。というのも、日本には起業の機会が、特に外国人の目線で市場を見つめた時に見いだせるであろう機会が多くあると思えるからです。

日本はある意味で非常に洗練され完成された社会。その裏返しとして、固定観念・「こうあるべき」「これが当たり前」という通念が広く人々に共有され、諸外国ではありえないような不便が「当然のこと」として受け入れられているようなケースが多いと感じます。また、これまでクローズドな社会であったがゆえに、外国人にとって必要なサービスが未整備という状況もあります。

そうした起業機会を、日本人が見つけるのはやはり難しい。社会通念やしがらみの「当事者」であるからです。そこで、外国人起業家に期待、というわけです。彼らの目線で見た「こうあるべき」を事業化し、日本の社会に刺激とより開かれた可能性を見出してほしい。私も個人的に何かできることはないか、アンテナを張っています。