経営者は人間について学ぶべし

先日あるエグゼクティブコーチ(経営者層に対してコーチングを行うプロフェッショナル)の方とお話する機会があり、その席で印象に残る言葉がありました。

日本の経営者には「人間」について知らない人が多すぎる。

自分の経営する会社にいる社員に対するとき、過剰なプレッシャーをかけたり高すぎる目標を与えたり、あるいは実績の出ない社員を責めたり。企業の中で当然のように行われているこうした行動は、「人間を理解していない人がやること」だと彼は言ったのです。

人間はプレッシャーを与えられたり責められたり、罰に怯えたりするときには生産性が下がり、創造性は失われ、ストレスが溜まりモチベーションが下がる。これは科学的にも証明されている人間の心理・行動を司る原則。ところが、ビジネスリーダーの中にはそうした原則を無視している人が多い、と。人間の脳について知らないと言ってもいいかもしれない、とも仰っていました。

これは先日このブログで紹介したダニエル・ピンク著「モチベーション3.0」でも触れられている考えです。人間は「うまくいったら報酬を、失敗したら罰を」という「アメとムチ」式の対応では、著しくモチベーションが低下するのです。たとえ罰がなくとも、「これができたらこれをあげる」というような交換条件型の報酬も同じです。

部下を持つ身になったビジネスパーソンは、一度静かな場所で、自分自身について考えてみる時間を作るといいのではないかと思います。自分はどんな時にモチベーションが上がるか、自分はどんな目標の作り方をすると積極的に取り組もうという気持ちになるか、自分はどんな叱られ方をすると憤慨し、どんなときには納得するか。

人間を知らないというのは、言い換えてみれば自分という人間に対する分析や思考をきちんと積み重ねられていないということにもつながる気がします。最も身近で、かつ最も分析し甲斐のある存在である自分。それを静かな場所で冷静に振り返り、そこでの「自分の姿」を部下や周囲の人間に照らしてみて、リーダーとしてどんな行動をすることが最善なのかを考えてみる。

すぐには答えは見つからなくとも、そうした思考を繰り返して蓄積していくことで、徐々に人間というものが見えてくるということなのだと思います。僕自身も、最近はこのブログをお休みして「自分との対話」という形で手帳に日記をつけたりしていました。自分という人間を研究してくれるのは、自分くらいですからね。

最後に、冒頭のエグゼクティブコーチの方のオフィスに一枚の紙が貼られていました。

岐路に立ったら、楽しい方を選べ

Kazuteru Kodera