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結晶化する。プレゼンテーションを支える思考

AppleのCEO、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは世界的に高い評価を得ています。シンプルでありながら強いインパクトを持ち、聴衆を巻き込んでいく魅力に溢れている、と。そんなシンプルかつ強力なプレゼンテーションを作る際の考え方/技法を整理した書籍として「プレゼンテーションZEN」という本も注目を集めています。

僕自身がプレゼンテーションを作ったり、人に上手なプレゼンテーションの方法について話をしたりしている中で考えたことを、今日は書いてみたいと思います。

プレゼンテーションと聞くと、「才能/センス」といった点が不可欠だと考える人が多いと思います。たくさんの人、見ず知らずの人の前で自信たっぷりに立ち振る舞い、説得力のある言葉で話をする。ただでさえ人前で話をするのが苦手な人が多いというのに、そこにさらに追加的な要素を付け加えろというのですから、ハードルが高く見えても仕方ありません。

しかし、僕の考える「すぐれたプレゼンテーション」というのは、実際に聴衆の前に立つ時点ですでに7割くらいは出来上がっているものです。残りの3割が、本番での話し振りやパフォーマンスといった点ではないかと思うのです。つまり、どんなに人前で話すのが苦手な人であっても、70点のプレゼンテーションは事前準備の段階で作ることができると思うのです。

ここでのキーワードは、「結晶化」です。自分がそのプレゼンテーションで伝えたいメッセージを限りなくシンプルに表現できるようになるまで自分自身の考えを純化していき、結晶のように密度の濃い、中核の中の中核という部分にまでたどり着くこと。このプロセスを思考を重ねて行い、それをシンプルにスライドにまとめ、スクリプト(話す内容)にまとめていけば、聴き手に伝わるすぐれたプレゼンテーションができると僕は考えています。スライドが美しく作り込まれている必要性は二の次です。一言の「キーワード」や、それを表す図表や写真一枚でも、結晶化されたメッセージがそこに表現されていれば、それでいいのです。

ビジネスの場で、顧客に自分の販売している商品の説明をするプレゼンテーションを想像してみてください。ここでの「結晶化されたメッセージ」とはどのようなものでしょうか?商品のスペック?価格?導入までのスケジュール?費用対効果?いろいろと思いつくでしょう。
でも、そこでそれら全てを1枚1枚のスライドに落とし込んで行くというのではなく、「結局のところこのプレゼンテーションの目的を達成するために伝えるべきことは何なのか?」ということを、顧客の状況・顧客を取り巻く環境・競合の状況・自社の強みや弱みなどといった情報を横目で見ながら徹底的に絞り込んで行き、一言で言い表せるくらいになるまで濃密にしていくのです。それが「結晶化のプロセス」です。最初は時間がかかるかもしれません。しかし、実行する価値の十分にある作業です。

プレゼンテーションであれブログであれ書籍であれ、何かを他人に伝えるということを目的にメッセージを絞り込んで行く。そうして思考を深めていくことで、自分自身の中にある思考そのものもシンプルかつ強力になっていく気がします。他人のために(つまりプレゼンテーションのために)結晶化するという面もありますが、それ以上に「自分のために」(つまり自分の思考を高度化/深化するために)結晶化するという面があると思うのです。

プレゼンテーションzen

プレゼンテーションzen

  • 作者: Garr Reynolds,ガー・レイノルズ,熊谷小百合
  • 出版社/メーカー: ピアソン桐原
  • 発売日: 2009/09/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Kazuteru Kodera