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 Who have won the gold medal? 技術立国ニッポンの栄光と挫折

先日、ある国内大手メーカーのマネジャーの方のJapanese management, past, now, future」と題されたプレゼンテーションを聞く機会がありました。日本企業の経営やリーダーシップのあり方について、過去現在未来を考えるというテーマです。
その中で、日本メーカーがグローバルな競争において韓国勢(SUMSUNG、LG)に押されている状況を、バンクーバー五輪フィギュアスケートの金メダルを巡る戦いを引き合いに出してこんな風に表現していたのが印象的でした。

Mao : Triple Accel = Technology
Kim : "007" = Art & Entertainment

Who have won the gold medal?

世界で二人しか飛べないトリプルアクセルという「技術」に磨きをかけて臨んだ浅田選手に対して、キム・ヨナ選手は豊かな表現力と全体としての「芸術性」で観客の心をわしづかみにしました。長い時間をかけてイノベーションを重ね、世界の誰も真似ることのできない技術(Technology)で勝利を収めてきた日本企業。ところが現在、そんな日本企業の強みが失われつつあり、市場のニーズをうまく汲み取る韓国メーカーの猛追を受け、あるいは追い越されてしまっている。それをスケートになぞらえて説明されていたのです。
製品のライフサイクルが長かった過去においては、日本企業の持つ長期的視野に基づく経営は有効に働きました。人材を長期に雇用し、じっくりと技術を磨き、ステップバイステップでイノベーションを繰り返しながら製品を作りこんでいくやり方。これが成功の秘訣だったのです。ところが、多くの製品において状況は変わっています。
グローバル化が浸透した結果、製品のライフサイクルは以前よりも格段に短くなっているのです。アメリカや日本で開発され実用化された新技術が、ほぼ同時期に途上国でも売られる。つまり、立ち上がった新製品はほぼ同時に世界で売れていき、急速に市場が拡大するのです。一方、衰退も早い。かつては先進国で開発された技術が途上国に伝わるには数年を要しました。言い方を変えれば、企業は売り場を変えるだけで数年はその製品から利益を生み出すことができたのです。ところが、現在は違います。世界同時に売れ始め、世界同時に売れなくなる。そんなジェットコースターのような体験をするのが、グローバルマーケットなのです。
一つの技術に卓越することを目指し、何年もかけて人材をその方面で育成し、すり合わせ型の技術を蓄積していく日本流は、市場への対応力という点でスピード感を欠くという弱みを持っています。1日も早く製品を立ち上げて、1日も早く利益を刈り取らないと市場が消えてしまうような現代において、そのスピード感覚は世界標準との間に大きな「ズレ」を生じさせています。それが冒頭に書いたフィギュアスケートの例につながるのかもしれません。

長期的視野に立って、ハイレベルな技術を時間をかけて蓄積し世界で成功を収めてきた日本企業。いま、その栄光は翳りを見せています。製品ライフサイクルの著しい短期化と、激しいコスト競争、グローバルマーケットの多様なニーズの前に。日本企業のものづくりは、間違いなく変革を迫られているのです。
それは言い換えれば、日本企業の経営や人づくりのあり方についても「このまま」はあり得ないということを意味します。企業文化のレベルまでさかのぼってそのDNAを問い直し、上記のような世界レベルでの市場成長と多様化に対応しなければなりません。
企業はもちろんですが、個人もまたその渦の中に放り込まれる対象です。企業が没落することになれば、そこに雇用されている個人もまた没落し、これまでのような先進国トップクラスの生活水準を維持することはできなくなるでしょう。長期的視野で企業が人材を雇用し育成するという慣行も、もしかすると変わってしまうかもしれません。
国家ニッポンと日本企業とに属しているというそれだけの理由で享受できていた特権的な生活水準は、近い将来に必ず幻になる。そんな風に考えて、準備をしなければいけない瞬間がいま来ている。そう感じます。
Kazuteru Kodera