作る人、売る人、使う人

ロード・オブ・ウォー [DVD]

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「史上最強の武器商人と呼ばれた男」という副題がついたこの映画。コミカルなタッチで描かれながらも、シリアスなメッセージ性を持った、武器商人にまつわる物語です。
まずは冒頭のムービーが実に衝撃的。銃弾が工場で作られる工程から始まり、カメラは銃弾の視点で移動していきます。様々な工程を経て加工されながらライン上を流れ梱包されて出荷。最初にフタを開けたのはロシア人と思しき軍人。ところがすぐにまた梱包され、次にフタが開けられたのはアフリカの黒人ゲリラの手によって。そこからさらにトラックで輸送され、ライフルに装填されるのは紛争地帯のど真ん中。放たれた弾丸は、少年の眉間に・・・。
兵器産業を明に暗に批判する意図が込められた映画ですが、武器商人である主人公が発する一つの問いが心に残りました。「車のディーラーは自分が売った車で交通事故が起き人が死ぬなんてことは考えない。」だから自分も武器を売るときに、それがどう使われ何が起こるかなんて気にしない、という主張。
武器に関してのこの言い分はかなりの暴論のように聞こえますが、こうした「作る人・売る人の意図」と「使う人の意図」の問題は、過去にも現代にも、大きく歴史に影を落としている気がします。
最近では、Winnyをめぐる裁判がそうでしょう。被告である開発者はWinny著作権侵害に使う意図はなかったと主張し、一方の検察側は、Winnyがなかったら著作権を侵害する違法アップロードは行なわなかった、Winny著作権を侵害するために作られたソフト、と主張。両者の言い分は真っ向から対立していました。
作ったモノが自分の意図とは異なる使われ方をされたにも関わらずその責任を問われたのでは、技術開発者の開発意欲は削がれてしまう、これは事実です。自動車事故が起こる度に、「そもそも車なんて作る方が悪い」と訴追されていたのでは、自動車メーカーは新車を作る意欲をなくしてしまう。
とはいえ一方で、悲惨な自動車事故が起き、また著作権侵害が起きているのも事実。技術の受益者たるユーザー一人ひとりが責任ある行動をするしかない、という理想論的お題目を唱えるだけでは、事態は解決していきません。
いかに「作る人」を巻き込みながら、「使う人」の行動を牽制できる仕組みを作っていけるか。自動車産業が取り組む飲酒運転防止の技術開発と、危険運転への罰則強化。こうした両面からのアプローチをテストする期間が、しばらくは続きそうです。