大きな意志

晴れた日曜日に朝から自転車、ちょっと久しぶりな一日の始め方です。外に出た瞬間はさすがに寒さにひるんだけれど、走り出せばどうっていうことはありません。特に目的地は決めていなかったけれど、後楽園からいつもとは逆方向、飯田橋方面へ走ります。
ものの数分で飯田橋に到着。道路標識に「九段下」の文字を見つけ、あぁ、九段下もいいな・・・と。そして行ってきました。

実は一度も足を踏み入れたことがありません。別に思想信条として、というのではなく、ただ機会がなくて。晴れた日曜日だし、広々していてよさそう、という軽いノリで参道に続く階段を登り始めます。自転車は神社脇を走る九段坂沿いのガードレールに駐車。
最初に驚かされたのが、この鳥居。

写真の撮り方をあえてそうしている部分もありますが、人を圧するような独特の雰囲気を持った巨大な金属製の鳥居が参詣者を迎えます。ポジティヴな表現をすれば荘厳な、ネガティヴに表現すれば圧迫感のあるそのいでたち。『国家』というカッコ書きの言葉が、わずかに脳裏をかすめます。肯定でも否定でもなく、ただその言葉の秘める巨大さが心の中にズシっと居座るような感覚。

広々とした神社内。とはいえ、一つ一つの建物の造りはどれも重厚です。護国寺も重厚ではありましたが、ここにはそれとは違った重みが演出されている気がします。自然と、というよりは、演出された、という表現がぴったりくると感じるのは僕だけでしょうか。

門扉を通り過ぎる母子の、なんと小さく映ることか。そう、人が小さいのではなく、扉が大きいのです。”あえて”大きいのだと僕には思えました。
軽いノリで踏み入れたこの空間ではありましたが、建物の造り、配置など、次第に心を圧していくような力の存在に思わず真剣な顔になってしまいました。そこにあったのは、国難に殉じた人々を祀るという重い使命を帯びた一個の意志。そしてその意志は、『国家』という強大なシステムの存在があったがために生まれてきたもの。その大きな力と息遣いとを至るところに見てしまうのは、当然のことかもしれませんね。

photo : Nikon D200 with AF-S VR Zoom Nikkor 24-120 F/3.5-5.6