{日々の出来事]  IKEAの力

幕張での自転車展の帰り道、南舟橋の巨大家具店「IKEA」に初めて行って来ました。クルマでの来店を前提としたこういう巨大ショッピング施設に足を踏み入れるのは初体験でしたが、その迫力と独自のシステムに圧倒されたというのが正直な感想です。
大きなスペースに無造作に家具を並べているような従来型の店舗とは全く発想を異にした店舗デザインにまず驚かされます。来店者の導線を徹底的にコントロールして購買機会を最大化することを目的とした商品配置によって、客は家具の使用シーンをしっかりとイメージしながら店内を回遊することになります。そして、次々と目に留まる優れたデザインとリーズナブルな価格に思わず手が伸びてしまう。「その家具を使うところ、生活の一部になっているところをつい想像させられてしまう」というのがIKEAの最大の魅力です。
また、家具そのものはもちろんのこと、家具の周りで使われる小物なども、驚くような安さで提供してくれる。「この価格ならついでに・・・」とつい思わされてしまう。そんな巧みさにまた驚きます。「うまいなぁ」と冷静なビジネス視線で眺めているつもりでも、ついつい「欲しいなぁ」と思ってしまう。まさにセクシーな小売業をここに見た思いでした。

三つ目の、そして最大の驚きがこちら。セクシーな魅力に負けて沢山の買い物をした後には、こちらの「セルフサービスコーナー」が待っています。
一体どういうことか。家具その他が見事にディスプレイされたさきほどの”セクシーな”インテリアコーナーで目にしたお気に入りの家具について、来店者はその家具の品番と棚番地をメモするようにガイドされます。店員が手取り足取り「こちらの商品でよろしいですね?ではあちらのカウンターへどうぞ」なんてことは一切ありません。そもそも、インテリアコーナーで店員の姿を見ること自体がほとんどない。
そして、この「セルフサービスコーナー」では、何と客自らが在庫棚からその商品をピックアップするのです。重さ数十キロはあろうかという本棚も例外ではありません。200キロ以上積載可能というトロリー(カートのようなもの)に大きな家具(たいていは組み立て式)を乗せ、はぁはぁ言いながらレジに向かうというわけです。ここにも店員の姿はなし。
最後のレジもまた少々サディスティックで、レジ前のベルトコンベアーに商品を載せるのも客自身なら、梱包するのも客自身。自分で体を動かす分だけ家具を安く買えるというわけです。甘やかされて育ってきた日本の消費者には、ちょっと面食らう購入システムですね。
セクシーな魅力に負けた後には、体と財布による支払いが待っている。そんな”この世の縮図”のような空間が、IKEAなのでした。もちろん僕も例外ではなく、セクシーに展示された本棚その他をたんまり買い込み、ひぃひぃとトロリーを押し・・・それでも満足顔で店を後にするのでした。セクシービジネス万歳。