電話をかけてくる人は失礼なのか? 礼儀1.0と2.0の狭間で。

突然電話をかけて来たり、「ご挨拶」と称して明確な目的もなく訪問してくるのは礼儀知らずのマナー違反ではないか、という記事が紹介されていました。 

日本人は礼儀もアップデートできていない。礼儀2.0世代が感じる「相手の時間を奪う」非効率なマナー | BUSINESS INSIDER JAPAN 

ここでいう「礼儀2.0」においては、互いに最も貴重な資源である「時間」を尊重し、相手の時間を意味もなく奪うという行為が最も避けるべき事項だとされています。それに対して、日本社会でこれまで重要とされていたのは「自分の気持ち・誠意を(明示的であれ暗示的であれ)相手に見せる」こと。メールより電話、電話よりも訪問の方が「気持ちが伝わりやすい」し「丁寧」だからより良いのだという発想です。記事ではこれを「礼儀1.0」として対比させています。

私も個人的には礼儀2.0に近い嗜好を持っています。かかってくる電話は、相手によるとはいえあまり出ませんし(後から手が空いた時に折り返します)、Face to Faceの面談の時間が取れず予定が先延ばしになるよりは、ささっとウェブ会議形式で話をした方がいいと考えています。名刺も、もらったらスキャンして箱に放り込んでしまい二度と見ることはありませんから、EightなどのWebサービス上で「名刺交換」して済ませてしまっても気になりません。

 コミュニケーションツールが多様化し高度化した現代において、確かに訪問してのFace to Faceの打ち合わせや、形式的な名刺交換・賀詞交換は時間の無駄と言えるかもしれません。

ただ、ここにはやはり落とし穴があります。礼儀というのはあくまでも「相手にとって心地のいい行為」を指すのだということ。自分だけ勝手に「礼儀2.0」にアップデートしても、接する相手が「礼儀1,0」を心地いいと感じる人であれば互いのバージョンには互換性がなく、「失礼」になってしまうのです。当たり前ですが。

 社会に広く共有された慣習・礼儀の概念は、そう簡単には変わりません。また、グローバルな環境下では相手の文化で尊重される礼儀を理解した上でコミュニケーションを取ることは非常に大切です。

価値観や文化・慣習が混じり合い多様化した現代に生きる私たちに求められるのは、これまで以上に「相手が尊重している礼儀を理解する」こと。自分と相手が価値観を共有しているという前提に立つことなく、まずはよく相手を観察し、彼・彼女が「心地いい」と感じるのはどのようなコミュニケーション・関係のあり方なのかを考える、ということなのだと思います。