移民政策のない日本にどうしてこんなに外国人が働いているのか

こちらの本を読みました。

 

ジャーナリストの著者が、日本のコンビニ店頭にどうしてこれほどまでに外国人の労働者の姿を見るようになったのか、という所をトリガーとして「日本における外国人の就労と彼らの生活」について調査をしたというのが本書。

確かに、日本の製造業・サービス業のあらゆる「現場」において外国人の姿を見ないことはありません。昨今の人手不足・人件費高騰のおり、企業にとっても外国人は貴重な労働力であり、一方の外国人におっても(短期的な現象かどうかは別として)ここのところ上昇著しい賃金相場の状況は、日本という国の「就業国」としての魅力をさらに高めるでしょう。

ただ一方で、本書で力点を置いて紹介されるのはそうした外国人労働者を取り巻くルールと現実の歪み、そして収入獲得のために日本を目指す外国人を「食い物」にしている現地および日本の各種企業・団体・学校の醜い姿。

留学にせよ技能実習にせよ、本来の目的とは異なる「出稼ぎ機会」をアピールして労働者予備軍を勧誘し、高額なアレンジメントフィーや日本語学校の授業料を巻き上げる悪質業者のやり口。それらは「国際交流」とか「途上国支援」といった理念を看板に据えているだけに一層そのグロテスクさを増し、海外で仕事をする私自身の思いと照らして何ともやりきれない気持ちにさせられます。(もちろん良質な業者もいる、という前提ですが。)

海外で生活をしてみて、やはり日本という国はそのインフラ、サービス、環境などいずれをとっても世界で有数の住み心地のいい場所だと思います。そこで仕事をしたいと思う外国人がたくさんいることは純粋に嬉しい。ただ、現行の制度はそうした外国人に歪んだインセンティブを提供する仕組みになっており、そこに群がる人々の悪しき動機を制御できていない。そうした現実を、日本に住む外国人や彼らに関連する企業・団体等への多くのインタビュー・調査を通じて浮き彫りにしているのが本書。日本に在住する外国人に対して「良い・悪い」の視点ではなく、現実を見るために必読の書。