ニッポンの仕事観 仕事は辛く大変なもの?

「お父さんは昼間、会社で汗水垂らして頑張って働いてる。そのお給料であなたはご飯が食べられている。」こんな話を母親から聞かされたことのある人は多いと思います。汗水垂らして、という言葉が入っているかは別として、このセンテンスから読み取れるメッセージは、「仕事は大変なもの」であり、その大変なものに取り組んだ犠牲の対価として報酬額与えられ、家族はそれに依存している、というものです。

仕事は犠牲であり、報酬はその対価。ごく当たり前に受け止められているこのメッセージですが、僕にはすごく異様に感じられます。まず、仕事は面白く楽しくあるべきだし、報酬はビジネスに貢献した配当として受け取られるもので、犠牲の対価ではない。もちろんお金を稼ぐために働くという側面があるのは事実だし、現実に生活していくためにはそれも大事。でも、ベースにある仕事観として冒頭のような姿というのは、やはり健全ではない気がします。

藤沢周平作品が好きで、映画でも何作か見たのですが、多くに共通するのは東北の貧しい藩「海坂藩うなさかはん」の下級藩士の生活ぶりが描かれていること。
ただでさえ貧しい藩、それも下級武士となると、主人公たちの仕事も地味で、とても楽しんでいるようには見えない。それでも、父祖から受け継いだ大切な「お役目」を黙々とこなし、時には理不尽な扱いにも我慢する。楽しいとは言えないお役目も、それを終えて帰宅すると家族は三つ指ついて「お帰りなさいませ。」と迎え、父を尊敬し禄高は少なくとも家族愛に満ちた生活をしている。

日本のなかには、こうした原風景、仕事観といったものを尊いと感じる文化的なベースがあるのでしょう。なかなかそれを変えるのは容易ではない。でも、仕事に楽しさを見出だすことは、家族にとっても大切な事だと思います。少なくとも僕は、仕事を楽しんでいる父親でありたい。

さて、エンジョイ・ワークの国タイランドから、日本に向かいます。