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心理学者 強制収容所を体験する

フランクルの「夜と霧」の原題は、「心理学者 強制収容所を体験する」というのだそうです。暗くしんみりとしたイメージの前者と比べて、原題の方は冷静な響きを持っていますね。よく思うのですが、海外の作品(本にしろ映画にしろ音楽にしろ)のタイトルを日本語らしく翻訳した結果として意図せざるイメージを受取り手の心に惹起しまっているケースがあります。なんというか、勿体無い。

夜と霧 新版

夜と霧 新版

受験知識としてこの本のタイトルだけは知ってましたが、上記のとおりの暗いイメージに心が惹かれず、これまで手にとることのなかった本です。が、実際のところ中身の記述・筆致はいたって冷静なもので、原題のとおりあくまでも心理学者として経験したナチスドイツの強制収容所とそこに収容された人々について綴られています。
幸福とは正反対といっていい極限状態の中で、人間が生きるということについて生々しい記述が多くされていて示唆に富む一冊ですが、今の自分が引き込まれた一文はこんなものでした。

自分を待っている仕事や愛する人間に対する責任を自覚した人間は、生きることから降りられない。まさに、自分が「なぜ」存在するのかを知っているので、ほとんどあらゆる「どのように」にも耐えられるのだ。

精神科医である著者が、絶望のために打ちひしがれ自殺を考える人々を前にして、異国で帰りを待つ子どもたちや完成されることを待っているしごと 仕事のことを思い起こして生き抜こうと話を
する場面です。