まずは型を極める、そして創意工夫で型からはみ出る、それがまた型になる
現場力をテーマにした本を先日続けて二冊読んだことから、最近そんなテーマについて考えていました。正直なところ下にあげた二冊はいずれも現場の力の重要性を熱心に説くものではありつつも、具体的な論には踏み込まれていないもの。少し消化不良というのが感想でした。
もちろん自分なりの結論めいたものには至っていないのですが、少しずつ整理していければいいので、現場力に関連して考えたことを、ここにアイデアとして残していきます。
ヒントは「型」とか「マニュアル」についてぼんやり考えたところから。
よく「マニュアル通りの仕事ではダメ」と言われます。しかし、マニュアルには大切な意味がある。先人たちが日々の仕事の中で見出した現場の知恵を、わかりやすく後進に伝えたり保存して行くために暗黙知を形式知に変えて行く作業がマニュアル化であり、「型」の創造なわけです。それがなければ、現場は一向に進歩していかない。
マニュアル通り、型通りの仕事というのは、言い換えれば「その現場て生み出された英知の結晶」なわけですから、なんら批判されるものではないはずです。要は使い方次第ということなのでしょう。マニュアルや型といったものが、顧客の満足度を下げたり組織を弱体化させてしまう原因となるか、逆に強みとなるか。「使い方次第」の境界線には、一つの重要なポイントがあるのではないかと思うのです。それは、継続的に型を進化させていくマインドセットや文化といったものが組織に備わっているかどうか。
マニュアル通りにやれば問題ない、型通りに仕事をしていれば大丈夫という守りの発想ではなく、「マニュアルや型は【現在までのベストプラクティス】であり、未来に向けてそれを更に進化させていくのは自分たちだ」という使命感のようなものが備わっている現場であれば、マニュアルや型は生き生きと使いこなされ、新たな気づきを元に強化され進化していくのではないかと思うのです。
そのためには、現場のメンバーがマニュアル・型の生み出された理由を理解した上でそれを徹底的にマスターし使いこなせるレベルになる必要があるでしょう。そこから先に初めて、「型からはみ出す」ことによる未来に向けた進化が可能になってくる。型を極め、次に型からはみ出す。はみ出した結果のフィードバックを受けて、それが新たな型となるにふさわしいものであるならば、そこで型は進化しマニュアルは書き換えられる(あるいは書き加えられる)。
こうした形で、暗黙知だったものがマニュアル・型によって形式知となり、実践を通じてまた新たな暗黙知が生み出され、そこから形式化のプロセスを経て新しい型・マニュアルとして形式知になっていく。こんなスパイラルを創造できる現場は、まさしく現場力が備わっていると言えるのではないでしょうか。
ではどうしたらそんなポジティブなスパイラルを生み出す現場になっていくのか、という点についても、引き続き考えて行きたいと思います。
Kazuteru Kodera
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