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 経産省の山田課長補佐 ただいま育休中

今年の書籍3冊目は「経産省の山田課長補佐 ただいま育休中」を挙げたいと思います。これまでの2冊がビジネス書だったのに対して一転という感じがしますが、実はそうでもありません。子どもを育てるという人生の重要な仕事を、どのように通常の仕事と両立させていくか、どのように家庭内での役割分担を構築していくかというテーマは、ビジネスに打ち込む人々にとって非常に重要なテーマだと思うのです。

経産省の山田課長補佐、ただいま育休中 (文春文庫)

経産省の山田課長補佐、ただいま育休中 (文春文庫)

本書で詳細に描かれている育児休暇取得に至る経緯や休暇中の生活といったものは、日本においてはある意味で極端なケースと見られるかもしれません。妻が仕事を続け夫が育児休暇を1年とる。それも経産省のキャリア官僚が。
しかし、それは見方を変えれば、男性が仕事と育児との双方に積極的に関わる姿の先進的なカタチと言うこともできるわけです。仕事と育児、どのようなバランスで自らがそれを実行するかは、個々人が判断することでしょうが、本書を一つの”実行可能な”ケースとして捉えることは有益だと思うのです。
本書に登場する「母乳以外の育児はすべて男性でもできる」という言葉はまさにその通りで、卒乳後については「育児は結局のところ女には勝てない」という言い訳は通用しないのです。もともと本書はヨメに薦められて読んだのですが、読了後は上記のように認識が改まり、僕自身がより自律的に育児ができるようになったと感じます。
そして、本書における最大のメッセージ、「育児は何よりも楽しい」。
著者は「女性にだけ独占させておくのはもったいない」といった表現をしていますが、これはまったく同感です。子どもの日々の成長を目の当たりにし、喜んだり不安になったり胸が締め付けられるような愛情を感じたり。子どもと接する時間が多くなれば、自ずからそうした感情と相対する機会も多くなります。これは、仕事以上に楽しく意義ある活動だと思うのです。
そしてまた、子どもの好奇心に満ちた姿やすさまじいスピードの成長を見るにつけ、人間の持つ無限の可能性というものへの信頼感が湧いてくる。これも育児の意義だと思います。人間ってすごいな、素晴らしいな、と思える瞬間に本当にたくさん出会えるのです。
昨今は「イクメン」が”ブーム”と言われ、育児を「手伝う」男性がもてはやされています。これは、「育児=大変なこと」だから、「手伝ってあげなければ”いけない”」という認識がバックボーンにあるように感じてなりません。そうではなく、本当の意味で素晴らしい活動だからこそ、仕事と優先順位をそっくり入れ替えて取り組む価値があるのだということ、もっと伝えたいなと思います。
Kazuteru Kodera