企業の成長ステージと人材

企業が成長する過程で、人材に対する考え方は変化していきます。
創業期はその規模が小さく社員数も少ないがゆえに、また業務タスクの内容が常に変化する流動的な事業環境にさらされているため、一人ひとりの人材が持つ能力、とくに創造性に大きく依存することになります。
やがて企業が成長期に入ると、一般的にはそうした成長を支えるべく業務の専門化が行われていくことになります。部署が機能別に分かれていったり、人材に期待する職務内容が明確に定義されていったり。流動的であった事業環境も徐々に直線的なものへと変化して(予測可能なものになって)くるのに伴い、人材も専門化・機能化してくるのです。こうした過程を通じて、企業はその効率性を増し成長をドライブしていく。
企業がその成熟期に入ると、専門化の深化が進み、結果として余剰人員を生み出すことになることがよくあります。人材の専門化が進んでいるため、ある領域のタスクが環境変化などで消滅しても、それを遂行していた人材は組織内にそのまま残ってしまうことが一つの原因です。また、専門化した業務を遅滞なく遂行するために、常にある程度のバッファ(緩衝)をもって人材を手当てする必要があるというのも余剰人員を生み出す原因になります。
最後のステージは変革期です。成熟した企業はやがて衰退へと転じていくことになるわけですが、それを回避し再び成長へと軌道を修正すべく、戦略と組織に変革をもたらす努力が行われるのです。このステージでは、時に大胆な人員削減が行われたり、人材ごとの役割定義が大きく見直されたりします。多能工化(マルチプレイヤー化)が推奨され、あたかも人材に求める期待は創業期のそれに近いものになる。こうした変化に耐えられない人材は組織を去り、ますます変革が加速していく。
もちろん上記は一般論です。企業によっては成長ステージの変化に伴う人材像の変化を巧みにコントロールし、とくに成熟期における停滞を回避することに成功する事例もあります。しかし、事業の成長と組織の拡大に伴う上記のような変化の中で、一人ひとりの人材が果たす役割が変化していくことは避けがたいものです。
人材側の視点からすると、自身がいったいどこのステージの人材像にフィットするのか考えてみることが重要になります。一方、企業側の視点からすると、自社の成長ステージを見定め、現時点と将来の人材活用の方法とその仕組みについて検討する必要があるということになります。
Kazuteru Kodera