にっぽんの営業、欧米のマーケティング

ある大企業で海外法人の副社長を務めた方とお話する機会がありました。そこで話題に上ったのが、日本企業のマーケティングと欧米企業のマーケティングはどう違うのか?という点。僕自身「何となく違うけど、どう違うのかうまく説明できない」と感じていたテーマだったのですが、彼は見事に説明してくれました。
曰く、

日本企業と欧米企業におけるマーケティング違いは、「営業」にある。
欧米企業が営業(Sales)をマーケティングにおける価値連鎖の最後の一つの鎖、といった見方をするのに対して、日本企業における営業とはマーケティングそのものであると言える。

日本企業の多くにおいて、営業は顧客接点であるのみならず、そこから吸い上げられたさまざまな情報、要望やニーズ、競合情報などを社内のあらゆる部門に伝え、それらの部門を統合して顧客に向けた解決策を提示するための起点として機能している。そういうことなのでしょう。
「日本企業はマーケティング不在」と言われます。その通りでしょう。欧米企業が考えるマーケティングのプロセスというのが社内に存在しない企業というのは日本にはたくさんあります。それでも日本企業がこれまで世界を相手に戦ってこれたのは、まさに「営業はマーケティングそのもの」と言われるような、強い存在としての顧客接点が機能していたからなのでしょう。
言い換えれば、営業がそのような起点としての機能を失ってしまえば、マーケティング不在の日本企業はとたんにその弱さを見せることになります。機能としての部門間の鎖はつながれず、バラバラな情報を元にバラバラに行動をするような状況になってしまうのです。
マーケティングを盲目的に社内に取り入れる前に、一度自社の「営業」というものが日本企業ならではの存在感を失っている現実を直視してみる必要があるかもしれません。
Kazuteru Kodera