BOP化する日本社会 

日用品を製造/販売するライオンや小林製薬などが、従来のパッケージよりも小口化(容量を3割〜5割減)し、価格を5割程度にした商品を相次ぎ投入しています。ライオンは柔軟剤など、小林製薬は芳香剤などを対象に今後も展開を進めて行くとのこと。
こうした商品が投入される主な理由は、小売店のプライベートブランド品との価格競争にあるようです。メーカーブランド品よりも圧倒的に安いプライベートブランド(PB)品に顧客が流れメーカーの売上を圧迫していることから、小口化して購入しやすい価格帯に持って行こうという意図。まともに値下げをしていたら収益を圧迫してしまいますから、量を減らして収益性は維持しようということですね。
シャンプーや柔軟剤の小口化というキーワードを見てまず思い出したのは、BOPマーケットにおけるP&Gなど海外日用品メーカーの取り組みです。
インドなど新興国では貧困層に属する人口が多く、先進国で販売しているようなパッケージサイズの日用品を販売しても購入することができません。そこで、シャンプー1日分、石けん一回分といった形で小分けにし、貧困層の人々でも購入できる分量に設定したことでビジネスを拡大したという例があるのです。これがいわゆる「BOPビジネス」の成功例とされています。
今回のライオンなどの取り組みは、もちろん貧困層をターゲットにしたものではなく、あくまでもPB品との競争上の理由で採用された打ち手だと思われますが、日本の二極化する消費者像を浮き彫りにするニュースだと感じます。
価格をKBF(Key Buying Factor)として安いもの安いものを求める消費者がたくさん存在する一方で、プレミアム商品を好む層も多くいる。中間がなく、上と下に二極化した消費者が市場を構成するイメージです。
日本の事情が複雑なのは、この二極化構造が個人の中で同居しているということ。シャンプーはPBの激安品を購入するけれど、高級な腕時計を喜んで買う。そんな現象が当たり前のように存在しています。モノやサービスを提供する側からしてみると、一概に収入レベルや生活水準だけで顧客を細分化できない、やっかいな市場がそこにあるのです。
Kazuteru Kodera