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新興国の衝撃6 良きものを受け入れて活かすこと

今回の2週間にわたるコースでは、日本企業の持つ経営の強みを彼らに紹介したり実際に企業を訪問してその目で見てもらったりという要素も多く含まれていました。現場を巻き込んで問題解決をしていくチームワーク、長期的な視野にたった経営、社会や地域に貢献する姿勢、経営理念や経営哲学に沿った事業運営など、日本企業のもつ良いところを、可能な限り実例を用いて理解してもらえるよう配慮していたのです。
もちろんそうした日本的価値観の全てが彼らにとって親和性の高いものではありません。ワーカーと経営者との間の距離は日本とは比べ物にならないくらい遠くチームワークを構築しにくい文化を持っていたり、短期的な利益を重視する傾向が強かったり。例え日本経営の強みを紹介しても、すぐにそれを「ああそうか」と受け入れることはありません。「なぜ?どうして?どこが優れている?どういう点が会社にとってプラスになる?」と矢継ぎ早に質問してきます。彼らのこれまでの経営姿勢やリーダーシップのあり方に対して、コンフリクトが発生しているからです。
ところが、丁寧に質問に回答し、それが彼らにとって納得のいくものであった時、彼らの「新しいアイデア」に対する受容力は非常に高いものがありました。「なるほど、それを導入するとこういう効果がありそうだ。やってみよう」と。自分の頭で考え、わからなければ質問し、納得できれば受容する。そんな柔軟な思考と態度を、持っている人が多かったのです。
日本人もかつて、古くは中国大陸、近代以降では西洋から、よきもの/優れたものを積極的に輸入し、それを日本流にアレンジして上手に活用してきた経験があります。ところが最近はどうでしょうか?自分の頭で考えることをせず、盲目的に外国流を受け入れる傾向が強くなっている気がします。
企業における成果主義の行き過ぎた導入が失敗したのは、個人主義(Individualism)的なアメリカ文化と、集団主義(Collectivism)的な日本文化との違いを考慮せず、盲目的に仕組みだけを導入した結果です。良きものを受容するに際して、「自分の頭で考える」プロセスを省略するとどういうことが起こるのか、それを示した格好の失敗例でしょう。
己を知り、己にとって新しきものがどのような効果を及ぼすのか。それがプラスであれば導入し、マイナスであればそれを打ち消すようなアレンジを加える。そんな柔軟かつ強固な受容力を、再び取り戻して行く必要があるように思います。
Kazuteru Kodera