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情報の深層へ?はたまた無軌道な奔流?日経電子版有料化

日本経済新聞が、電子版の有料サービス開始に踏み切りました。世界の有力な新聞がトライして、未だ「成功例」の出ていない領域。ネットでの情報はタダ、という読者側の常識化した観念を打ち破ってビジネスとして成功を収めるのか、とても興味のあるところです。
紙の新聞を購読していれば追加1,000円、そうでなければ4,000円という料金設定については、既存の販売店への配慮ということになるでしょう。電子版が下手に安いと、紙を解約してそちらだけにしてしまう読者が大量発生することが目に見えていますから。
それより気になるのは、プラス1,000円を支払った購読者が「何を得ることができるのか?」という点。
現在のところ、事前に登録したキーワードで記事を見つけておいてくれて配信してくれる機能や、スクラップブックを作る機能などが大きく紹介されています。そうした「ツール」の使い勝手ももちろん重要だとは思いますが、日経の提供する情報の質がどうなるのかという点が大きいでしょう。
大きな意味を持つと考えられるのは、読者のアクセスできるニュースの量が圧倒的に増えるということ。
今回の電子版では、これまで紙面には掲載されなかったニュース、記者が文章にしてはいたが紙面の面積の制約から掲載されなかったニュースに、読者はアクセスできるようになります。紙に載せるには小さなニュース、あまり多くの人に影響を与えないニュースなど、これまでボツ!とされていた記事が、表に出てくるわけですね。これは、紙面に掲載されるだけの情報では飽き足らないと考えていた人たちにとっては朗報です。ニュースの「深層」の部分に、より接近することができる。一方、そうでない人から見ると、「どれを読めばいいのかわからない」という「情報の奔流に呑まれた」状態になってしまう危険もある。
これは、情報は多い方がいいのか、ある程度のフィルターがかけられて絞り込まれた情報の方がいいのか、という議論に行きつきます。
これまで新聞社というのは、「編集」という作業を通じて情報のフィルタリングをしてきました。言い方を変えれば、読者が知るべき情報とそうでない情報とを、新聞社の見解で仕分けしてきたわけです。こうしたフィルタリングが、電子版においては弱まることが予想できる。先日お会いした日経記者の方は「編集権の放棄と見る人もいる」とコメントされていましたが、まさにこのフィルタリング機能を(全てではないにしても)捨てるというが電子版の意味なのです。
フィルタリングされていない膨大な情報を前に、それを活かしてニュースの深層を突き詰めることができるか、はたまた奔流に呑まれてさまようか。読者側に求められるレベルは日に日に高くなっている、そんな気がします。日経電子版がビジネスとして成功するためには、そうした漂流者が出ないようにツールの面での工夫に今後も知恵を絞ることになるのかもしれません。

Kazuteru Kodera