学割という形をした誘惑

Appleは自社のパソコンMacに学割制度を設けています。Macを欲しいと思いながら、ソフトの互換性など諸々の懸念で踏み出せずにいる僕にとっては、社会人大学院生をやっている間に!という強い誘惑になるシステム。今日はそんなわけで学割について書きます。
学割。その名の通り、学生に対して割引価格で商品やサービスを提供する仕組みです。ほんのキモチ程度のものもありますが、中には半額などと、とても大きな割引率を適用するケースも。いったいどういう理由で、こんなにも大きな割引を企業は提供してくれるのでしょう?
おそらく、われわれが人生で最初に接する学割は、公共交通機関のそれでしょう。電車やバスの定期券を買うときに、学校の発行してくれた証明書をもっていくと、かなりの割引率で定期を購入することができます。その割引率たるや、一見不可解なくらいに大きい。だから、僕たちは学割というとついこの公共交通機関の制度を思い浮かべてしまうんですね。「あー、学生のために負担を減らそうと割引してくれるんだ!ありがたや」と。
だから、携帯電話会社や冒頭のAppleのような会社が学割制度を持っていると聞くと、つい「ありがたや」と同じように考えてしまう。でも、こうした一般企業の提供する学割と、公共が提供する学割とでは、その意味が全然違います。
なぜ、携帯電話会社は学割を、それも半額や基本料無料といった大幅な割引をするのでしょう?携帯電話会社のメリットはどこにあるのでしょう?
学生に思いやりを示すことで、いい会社だと思われたい?それもあるかもしれません。でも、大きな理由は「顧客の囲い込み」です。
一般に、携帯電話を別のキャリアに切り替えるのには高いハードルがあります。メールアドレスが変わってしまうのが最大のハードルでしょうか。言い換えると、携帯電話会社からすると一度顧客になったらなかなか逃げない。
Appleのケースはどうでしょうか?彼らの商品はご存知の通りきわめて高い顧客満足度を誇っています。一度使ってMacの素晴らしさに慣れてしまうと、Windowsには戻れないとも聞きます。つまり、Appleとしてみれば何とか最初の一台を購入して使ってもらうことが重要で、あとは自然とファンにしてしまう自信がある。Mac用のソフトを買ったり、その操作方法に慣れてしまうというのも切り替えハードルになりますね。
学割という割引制度は、そんな切り替えハードルのある商品を、顧客に最初に購入してもらうための強力な武器になります。学生という限定をつけることで、割引にならない他の顧客も不満を感じることはありません。そして、学生を一生やっている人は稀ですから、数年内に正規料金をいただく普通の顧客になります。
公共交通機関の学割とはちょっと違った意図が、そこにはあるんですね。
さて、僕にとってはAppleからのこの誘惑とどう対峙するか。それが問題です。
Kazuteru Kodera