ものづくりの発想でサービス業を科学すると・・・

今朝の日経新聞に掲載されていたサイゼリヤの記事。ファミレスとしては驚異的な安さを実現しており昨今の消費低迷の中でも業績を伸ばしている同社の安さの秘密として、安易なコスト削減ではない「科学の目」を使った見直し活動が紹介されていました。
正社員の多くが理系という同社。「掃除とはどういうことか」という観点で店内清掃を見直し、掃除機よりもモップを使ったほうが作業者の肘の動きを少なくできることがわかった。さらに、幅30センチのモップを使うよりも120センチのモップを使うほうが通路の往復回数が大幅に減らせることがわかった。そんな活動を繰り返し、掃除に必要な時間を半分にしてしまった。つまり、そうした見直しで生産性が2倍になったという。
それ以外にも、パスタの麺をゆでるというのは科学的にはどういうことか、厨房の暖房は必要な流量に対して妥当か、といったことを科学的に検証しながら、業界の「当たり前」を全部疑っていく姿勢を貫いているといいます。結果としてもたらされた圧倒的な価格競争力。
お気づきの通り、上記のような思考法は日本の製造業がお家芸としてきた「カイゼン」の手法です。作業者の動きを徹底的に観察し、「そのネジを取りに行く動作を1秒縮めるにはどういう配置にしたらいいか」といったことを積み重ねていく。改善ひとつのインパクトは製造リードタイムにしてほんの1秒とか2秒。それでも、それが10,000個製造される製品なら10,000秒の生産性向上になる。改善をどんどんと積み上げていくことで、コストを着実に下げていく。
サイゼリヤの取り組みは、製造業が長年にわたる国際競争の中で勝ち抜いていくために磨きこんできた分析手法を、サービス業などその他の産業に応用した事例です。そう考えると、まだまだ適用の余地はある気がしますね。あっと驚く劇的なイノベーション(Transformational Innovationというそうです)は凡人にはなかなか難しいけれど、小さな改善を記録して積み上げて、やがては知の巨人と肩を並べるような効果を上げる。そんな姿にあこがれを抱きます。