読書の記録

先日書いた「決壊」の装丁についての話が、著者本人のブログに書かれていました(本文)。本の「小口」というんですね、この切断面の部分。それが、読み手の緊張状態を自動的に記録していく装置として機能しているという話、とても興味深く思いました。
小説というのは本当に不思議なもので、読んでいるときの自身の精神的成熟度であるとか精神のバランスのようなものであるとかが微妙に絡み合って、その瞬間にしか味わえない独特な「感覚」をもたらします。読書は一回きりの行為であって、同じ感覚をもってその本を読むことはもう一生ない。例え同じ小説を同じスピードで同じような環境下で読んだとしても、読み手が感じることは同じではないんですね。
そうした「感覚」の微細な変動といったものを自動的に記録する、というこの装丁の発想。「決壊」という小説そのものの重みに拠るところもありますが、単なる出版側の遊び心といったものを超えた、読書という行為への鋭い洞察が込められているような気がしました。

決壊 上巻

決壊 上巻

決壊 下巻

決壊 下巻