勝間本の最新刊

すさまじいペースで本を執筆・出版されている勝間和代さんの最新刊を読みました。

著者が首尾一貫して唱えるビジネスパーソン個人の生産性向上を達成するために、「7つの力」という形で思考ツールを提供する一冊。既刊の時間投資法や勉強法についての著作がかなり著者独自のノウハウに拠っていたのに対し、本作は各分野で一般的に紹介・解説されている思考ツールを著者独自の観点で統合し噛み砕いた形で構成されています。
勝間氏の本は本当によく売れているようで、本作もすでに20万部を突破したのだとか。ビジネス書の世界で10万部を越える著作は非常に珍しいといわれている中、連続で大ヒットを飛ばし続けるというのは驚異的ですね。
20万人もの人が購入する、その背景にあるのは、日本のビジネスパーソンを取り巻く現状にあると僕には見えます。就職が「就社」だった時代が終わり転職が一般的になってきた昨今、自分の属する会社の業務内容や業界に通じているだけでは自分の本当の意味での価値を高めることができない、という認識が一般化してきているのでしょう。
従来であれば、銀行で働いていれば金融を、商社で働いていれば輸出入業務を、といった具合に特定分野・専門分野に特化した内容を勉強し深めていくのが当たり前だったのでしょうが、そうした状況が変化している。特定分野に入り込むよりまず先に、自身の知的生産性を高めるトレーニング(=思考法・勉強法・時間管理法など)を積むという志向性が高まっているのではないでしょうか。
PCに例えると、個別のアプリケーションソフトを強化する前に、自身の基盤となるOSをバージョンアップしようとする動き、と言えるでしょうか。
そうした動き自体は大いに歓迎すべき、と僕は思います。日本人の生産性は世界的に見ても下位群に属しているわけで、そこを改善するには個人の知的生産性を高めていくことが必須なのですから、20万人もの人がそうした意識付けをもっていることは素晴らしい。
少し心配なのは、そうした知的生産性向上の活動が「何に向かって」行われているのかという点でしょうか。「何となく将来が不安だから」、「とりあえず勉強しておいたほうがよさそう」、といった「何となく・とりあえず型」のトレーニングは長く続けることができないし、本当の意味で「腹に落ちる」ことが少ないのです。スポーツ選手が日々の厳しいトレーニングを継続できるのは、勝利という明確な目的があるからです。漫画「ドラゴンボール」で主人公たちが厳しい修行に耐えたのは、その時その時に世界を脅かす悪役を倒すという目標のためでした。それでは今、日本のビジネスパーソンにとっての「明確な目標」とは何なのでしょう?
僕自身にも問い続ける必要のあることですが、自分がどこに向かっているのか、という質問を毎日再確認し、その答えを体に染み込ませることは、日々の鍛錬の上では何より大切なことと思います。