会計本の最高峰

大阪出張の帰りの新幹線で読んだ2冊の本のうちの1冊。「グーグル化」で大きな話題を呼んだ、今おそらく最も注目されている女性経済人・勝間和代氏の著作です。

決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール

決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール

株式投資において本当に価値のある株に投資するために、企業の決算書を読み解こう、という趣旨の本ですが、著者が公認会計士ということもあり、A.アナリスト視点、B.会計士視点、C.投資家視点 の三者がうまくミックスされていて、非常にバランスのとれた会計本だと感じました。
何よりも、B/S・P/L・キャッシュフローステートメントの財務三表について、それぞれの関連性を踏まえて”ストーリー仕立て”の解説が加えられたり、決算書の粉飾や利益操作の具体的手法について実例を交えて語られたりと、シナリオ的展開で読者を飽きさせないところはさすが。
書店にはあまたの会計本、決算書解読本が並んでいますが、その中でも最高峰といっていいのではないでしょうか。財務諸表について全く知らない人にはちょっとキツイ内容ですが、初学レベルを少し超えたあたりの読者にとっては、一編の小説を読むような感覚で楽しむことができると思います。
こうした本を読んでみてつくづく思うのは、人間の学習にとって「ストーリー」が持つ大きな力について。この本が取り入れている「謎」という要素も同様ですが、人間の脳は「ストーリー=物語性」というものに対しては非常に機敏な反応をします。
ストーリー性を持っているか否かによって、その内容に対する人間の学習効率には天と地ほどの差が出るのではないでしょうか。多くの民族が歴史上で学んできた多くのことを物語に託して後世に伝えたのも、大いに頷ける。彼らは、その力をよく知っていたのでしょう。
現代の学校教育や企業内教育に、ストーリー性はあるのでしょうか?学生や新入社員が、ハラハラ・ワクワクしながら知的好奇心を燃やすような熱い物語は、語られているでしょうか?ぜひ、未来の人間の学びにも、物語性を活かしていってほしいものです。