成長の鍵は「希望」

Podcastingでコラムを愛聴していた伊藤洋一さんの著作。年末に読んだ「日本力」に続いて、最新刊であるインド本を読みました。

インドが目を見張る経済成長を遂げているというのは周知の事実ですが、いったいその原動力が何なのか、一体どのような制約条件を乗り越えて成長軌道に乗ったのか。日本の社会や企業に応用できる点はないのか。そんな思いを持ちながら読みました。
本のタイトルにある通り、インド成長の原動力はIT産業です。しかし、IT産業であれば先進国ニッポンにだってしっかり根付いているし、技術レベルにおいてインドに引けをとるとは思えない。では今どうしてインドが?という疑問は誰しもが抱くところでしょう。
僕がこの本を通じて強く印象づけられたのは、ITがインドの人々に「希望」を与え続けているのだということ。そしてその「希望」こそが、インドの躍進を支える力強い原動力なのだということでした。
インドには太古から「カースト」という身分制度があります。そしてその特徴は職業と深い結びつきを持っているということ。身分は職業を規定し、職業選択の自由というものがインドには存在していなかった。
そんな、固定的な職業環境・活力なき社会に一筋の光を投げ込んだのがIT産業。結果と効率を求める新興のIT企業は、インドの人々を決して身分ではなく、その実力で評価したのでした。そして、「超カースト」の職業であるITエンジニアという存在がここに生まれ、数多くの下層身分の若者たちを、あたかもストローで吸い上げるように、中産階級へと運んでいったのです。
そんな姿を目の当たりにした若きインド人たちは希望に燃えたことでしょう。固定化した身分から自らを解放してくれる力を、ITによって自分も得ることができるのだ、と。
希望によって奮い立った人間が放つエネルギーに勝るものはありません。次代を担う若者たちから、どれだけの「希望」のエネルギーが放出されているか。ここに、インドと日本という二つの国の大きな違いがあるような気がします。