思考を鍛える

独特な雰囲気を持つタイトル、そして普段ほとんど馴染みのない認知科学という分野。本棚の中に何ヶ月か眠っていた1冊だったので、思い切って手に取りました。未熟ながらフォトリーディングの効果もあって、昨日の夜と今朝のあわせて1時間弱で読了。とはいえ、学術的な文章なのでかなり苦戦・・・。

人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)

人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)

人間がいかに「思い込み」や「誤信」に陥りやすく、一度その沼地にはまってしまうと容易には出てこられないかということが、実際の事例を重ねながら説明されていきます。例に挙がっている人々の思考・行動は「あるある」という内容ばかりで、自分の身に惹き付けて人間の思考・認知の脆さを感じることのできる一冊でした。
今回は、「思い込みを排し、問題の本当の原因(=真因)に遡及して真実を見通すためのポイントは何か?」ということを念頭に読み進めました。仕事上では特に感じることが多いですが、「何が本当の原因なのか?」「一体何が起こっているのか?」ということを考えていく上でとかく邪魔になるのが「思い込み」。自分の立てた仮説に沿った情報ばかりを知らず知らずに集めていたり、反証が提示されても無意識のうちにそれを拒絶し、素直な心で見直しをすることができなかったり。皆さんの中にも意識・無意識を問わずそうした行動をしたことがあるという方は多いはずです。
そんな状況を打破して真実を見通すためのポイントは、以下の点にあるようです。

1.一度持たれた信念は、たとえ新たな情報が提示されたとしても影響を受けることはない。容易には覆らない。
2.誤信・思い込みを持たないことが何より重要であり、不完全なデータや誤解釈には注意する。
3.誤信を避けるには、誤信が生まれるメカニズムを意識した上で、常に仮定の問い直し・既知の情報への疑いを忘れないことが重要。

誤信を避ける、あるいは誤信から抜け出るためには、やはり「的確な問いかけ」が大切だと思います。「本当にそうなのか?情報に偏りはないか?当初の仮説に不十分な点はないか?想定にモレはないか?」といった問いかけが、思い込みに陥りやすい人間を常にその淵から救い出して正しい思考へと導いてくれる。
そうした「問いかける力」「質問力」といったものを学生時代に身につけることができれば理想的なのですが、実際は社会に出てから上司や周囲のメンバーからの厳しい指摘の中で鍛えられていくことになります。そういう意味では、若いうちにいかに「的確な問いかけ」に満ちた職場で時間を過ごすかということが、私たちの思考の鍛錬に如何に影響することになりますね。
あなたの周りには、的確な問いかけができる上司や仲間がどのくらいいるでしょうか?彼らは時に厳しくはあるでしょうが、あなたの思考を鍛えてくれ、恐るべき思い込みや誤信から救ってくれる存在なんですね。