再びノム

巨人軍論 ――組織とは、人間とは、伝統とは (角川oneテーマ21)

巨人軍論 ――組織とは、人間とは、伝統とは (角川oneテーマ21)

以前に「野村ノート」を読んだ際、続けて読もうか考えて見送った本。結局買ってしまいました。中日ドラゴンズファンである僕にとって不倶戴天の敵である巨人軍について書かれた本にあまり興味はなかったのですが、野村監督の持つ独特の組織論・リーダーシップ論にはやはり惹かれるところが大きく、手に取りました。
本書も、巨人軍についての考察が半分、残り半分が「野村の考え」と言われる野球論・組織論・指導者論・人間論で構成されています。

私は「精神野球」が嫌いである。
すなわち「体力・知力・気力」のうち、気力だけを重視する野球である。気力などというものは、プロである以上つねに持っていて当然。気力を問題視しなければならないようでは、プロ意識が欠如しているというしかない。(中略)
いやしくもプロであるのなら、気力に頼るなどということは恥であると認識しろと言いたい。

「ベストを尽くせ」「何が何でも抑えろ」「気合で打て」といった「精神野球」。ビジネスの世界でも、こうした光景は見られるものです。「意地でも売って来い」「全力でやれ」云々・・・。
頑張ることが悪いことではありません。ただ、問題解決を精神力のみで果たそうとすることは避けなければならない。それはひとえに、失敗したときに原因がわからず、次の打ち手を考えることできない、という点に尽きるのではないかと思います。
野球であれビジネスであれ、失敗は必ずします。失敗したときに、その原因を見出して次の打ち手につなげて成功へと近づくことが大切。ところが、精神力だけに頼っていると、失敗の原因はいつも「気合が足りない」「頑張りが足りない」「やる気の問題」となってしまう。結果として出てくる打ち手が「もっと頑張ります」という、小学生レベルの回答になるのも無理はありません。
そんなバカな経営者はさすがにいないだろう、と思われる方も多いかもしれませんが、「より徹底して実行する」「全身全霊で取り組む」などといった脚色された言葉で結局「頑張ります」と言い続け、失敗し続ける企業というのはたくさんあるのではないでしょうか。
気力ではなく知力。どんな分野にも、きっとあてはまることですね。