風変わり?それとも?

最近読んだ本の中で、風変わりな経営スタイル・仕事スタイルをとる企業について書かれたものを2冊。

発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法

発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法

アップルコンピュータなど世界中の一流企業の商品デザインを手がけるIDEO(アイディオ)。彼らがいかに優れたデザインを生み出していくのかを、プロジェクトの進め方、仕事のスタイル、社員とのコミュニケーションなどから多面的に紹介しています。
印象的だったのは、仕事をするスペースについて。一流のアスリートが一流の練習環境を重視するのと同じように、ビジネスにおいても自由な発想が育つ「温室」を作るのが大切だ、と強調している点。
デザインファームという彼らの仕事の性質上、その「温室」はかなり風変わり。プロジェクトごとに「スタジオ」を作り、仕事のスペースを自由に変えていってしまう。ある社員が休暇から戻ったら、自分のオフィスが完全に様変わりしていた、なんてこともよくあるのだとか。
そのオフィスにしても、天井から社員の乗ってきた自転車がぶら下げられていたり(駐輪場所がないから、という理由)、電車のデザインに必要だからと電車そのものをオフィスにしてしまったりとぶっ飛んでいます。
社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論

社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論

アウトドア用品の老舗パタゴニアの創業者が書いた本。タイトルにもある通り、パタゴニアの社員は平日だろうが昼間だろうが、いい波が来たらサーフィンに行く、いい雪が降ったらスキーに行くし、登山やクライミングにだって行ってしまうという会社だけれど、その経営の底流に流れる精神は確固たるもの。
ビジネスをする目的は「地球を守るため」とし、徹底的に環境に優しい商品作りを目指す姿勢、それでいて最高品質の装備をアウトドアラーに提供しようという姿勢には、ある意味で偏執狂的なこだわりが見て取れます。環境保護のためには経済活動を自粛しなくてはダメ、という単純な論理ではなく、そこによりよい解決策を求める熱い姿勢がパタゴニアにはあるようです。そして、企業という存在が持つ力への信頼も。

ビジネスこそ、大自然の敵にして先住民文化の破壊者であり、貧しい人々から奪ったものを富める者に与え、工場排水で土壌汚染を引き起こしてきた張本人。
それでもビジネスは、食べ物を作り、病気を治し、人口増加を抑え、雇用を生み出し、生活の質を概ね向上させる能力を持っている。しかもこれらの善行をなすと同時に、魂を売り渡すことなく利益を上げることもできるのだ。

著者の語る言葉は熱く、そして手厳しい。

今日、子供達のために何を残したいかと誰かに尋ねたら、「よりよい世界を残したい、そして自分たちの時代にはなかったものを与えてやりたい」という答えが返ってくるだろう。しかし人々は、こうしたバラ色の未来の実現に必要な選択をしていない。(中略)
企業は製品を作るべきか否かに関する決定を市場に任せっきりだが、製品を作る際に社会や環境に及ぼす負荷を最小限にとどめる責任だけでなく、製品そのものに対する責任も負うべきだ。
たとえば、自動車会社は消費者の求めがあればガソリンを大幅に食うSUVの製造をやめるというが、SUVを持つことの環境的・社会的代価について消費者を教育していない。

社員一人一人がこうした創業者の熱い思いを理解し、それを企業という器を通じて実現しようと努力を惜しまない。そんなプロフェッショナルな組織・社員がいると信頼できるからこそ、let my people go surfing (社員をサーフィンに行かせよう)と言えるのだと思います。