遅れてきた冬 マウントクックは雪の中

(かれこれ2週間近く体調を崩しています。数日間発熱した後、長くせきと喉の痛みに苦しめられる、これが今の流行風邪の特長だそうで・・・。ようやくその苦しみにも慣れてきたので、日付を遡ってまた書いていこうと思います。)
ニュージーランド最高峰のマウントクックを擁する「アオラキ・マウントクック国立公園」に着いたとき、そこはそれまでの青空とは打って変わって、すっかり雲に覆われた場所でした。そして、到着翌日には雪・・・。「今年は冬がずいぶん遅くやってきたから」ということらしいのですが、暦では「春」となるこの時期、今年のNZはまだ冬真っ只中なのでした。
原住民マオリの言葉で「雲を貫くもの」という意味の「アオラキ」。これがマウントクックマオリ語での呼び名です。標高は3754mと日本の富士山とほぼ同じ高さですが、周辺の気候が厳しく雪が多いことや、その切り立った構造から、毎年何人もの登山者が命を落とすほどの、厳しい山岳です。

僕たちがマウントクックの麓へと向かうトレッキングルートを歩き始めたとき、そこはすっかり雪に覆われていました。目の前は真っ白。天気がよければ見えるはずのマウントクックの姿も、雲にさえぎられて目にすることはできません。一年のうちの70%近くが雨か曇りという地域、これも仕方ない、と諦めて歩きます。もちろん吐く息は真っ白。

こんな雪の中を歩くような装備は持っていなかった僕たちが無事にトレッキングルートに入ることができたのも、ニュージーランドがルートの整備に多大な投資をしているから。DOC(Department Of Conservation 環境保護省)という政府機関が、全国各地の国立公園やトレッキングルートを整備し、環境と調和したアウトドアアクティビティの実現を果たしています。この看板もDOCが設置したもの。分かれ道には必ず設置されていて、地図がなくても迷うことはありません。

夕方近くに、少しだけ太陽が姿を見せてくれました。といっても、雲の向こうから透けて見える程度。それでも、雪をかぶって真っ白く輝く山々と、その麓に広がる氷河湖の眺めは、何とも言えず荘厳な雰囲気です。写真は、ミューラー氷河からの水が流れ込んでできたミューラー湖。
日の長いニュージーランドではこの時期でも夜8時ごろまで比較的明るく、外を歩くことができます。とはいえ、山岳地帯の天気は変わりやすい。あまり暗くなってからでは、ということで、その日はマウントクックの姿を見ることを諦め、ルートを戻りホテルへと引き返します。
3〜4日に一回は晴れるという確率ということで、滞在中に何とか一度マウントクックの姿をこの目で見たい、という強い思いを抱いてのプラン。自然の力には逆らえない以上、残念な結果になることも覚悟はしていました。ところが、どうやら幸運は僕たちに味方してくれていたよう。

夕食をとりながら窓外を眺めていると、見る見るうちに雲が流れ去り、本当に見事に夕陽に照らされたマウントクックが、その姿を現したのでした。時間帯によってピンク色の濃度が刻一刻と変わり、山の表情もどんどんと変化していく様、「圧倒される」という表現がよくあてはまる、そんな光景でした。
photo : OLYMPUS E-410 with ZUIKO DIGITAL 14-42mm F/3.5-5.6