新卒採用という名のギャンブル

10月1日・2日、内定式に向かう初々しいリクルートスーツ姿の男女を見かける時期ですね。そんな時にふと考えるのが、企業にとっての新卒採用ということ。
僕自身、新卒で採用された会社を3年で去り、現在の仕事を始めて丸3年。新卒採用と中途採用という、異なる二つの採用プロセスを経験して現在に至っています。そうした中で感じること、それは、新卒採用というのは「人を見る眼のない企業はすべきではない」ということ。
新卒社員を採用するということはつまり、社会人としての実績のない「真っ白」な状態の人材を、自社の戦力として採用するということです。採用する側のメリット・デメリットを整理すればこんなことになるでしょう。
■メリット:将来に価値が高まる(かも知れない)人材を、価値が上がってからでは実現不能な低コストで入手できる
■デメリット:将来の価値は見極めが難しく、ババ(ハズレ人材)を掴む可能性もある
企業は将来価値の上昇確率が高い学生を手にしようと、学歴や面接などで必死に審査をします。しかし、人間の成長性や将来価値などなかなか推測できるものではないわけで、結局は「学生時代に頑張ったこと」だとか「資格」だとか、仕事の能力には本質的に関わりの薄い事柄で判断せざるを得ません。結果、「ババ」を掴んでほぞを噛むという結果が待っているわけです。新卒採用とは、「当たるも八卦、外れるも八卦」のギャンブルめいた世界なわけですね。
かつての日本のように、新卒で就職した一つの会社に生涯勤務し続けることが美徳とされるような社会では、新卒採用において一定確率で「アタリ」社員を確保していく必要があったのかもしれません。しかし、現在はそんな前提が崩れています。有能な社員は、自身の価値をより正当に評価してくれる企業へと簡単に転身していきます。どんなに「アタリ社員」を入手できても、彼らを社内にとどめ活用していけるだけの「中身」が企業になければ、あっという間に見捨てられてしまうのです。
それならば、実績に見合ったコストを支払って中途採用市場から人材を獲得する方がいい、と判断する経営者が増えてくるのも無理はありませんね。人材の将来価値にのみ依存した新卒採用よりも、現在価値と将来価値の双方を勘案できる中途採用の方がリスクは抑えられ、確実に戦力強化につながるのですから。
「人を見る眼のない企業や、人材の真価を発揮させられる環境のない企業は新卒採用に手を出すべからず。それは採用する側・される側の双方に不幸をもたらす。」これが現在の人材市場の状況ではないでしょうか。それは、大企業であるか中小企業であるかを問わず、全ての企業に「人を見る眼」と「活かす環境」が問われているということです。