欠乏はすぐそこに

昨日は、自転車で池袋に行ってきました。往復8kmほどの軽いお出かけ。目的は・・・新しいレンズを触ってみたくて。うーん、素晴らしかったな。欲しいですな。でも我慢せねばなりませんな。
レンズを我慢したから、というわけではないのですが、またしても本を衝動買い。小説がどうしても読みたくなってしまって。

半島を出よ (上)

半島を出よ (上)

彼がナビゲーターを務めるテレビ番組「カンブリア宮殿」をよく観ているせいか、小説家の中では比較的身近な印象を持っている作家・村上龍氏。とはいえ、彼の小説は「愛と幻想のファシズム」を読んで以来わずかに2冊目。「愛と幻想・・・」も近未来を描いた作品でしたが、今回の「半島を出よ」もまた近未来の日本を舞台にしたストーリーです。
約半日で上巻を読み終えての感想。あまり気分よくスイスイと読める本ではありません。不愉快というのは違いますが、少なくとも僕にとっては心理的負担感が大きいという印象。その原因として考えられるのは・・・
①日本人の弱点、特に戦後民主主義の中で醸成された先送りの常態化・問題解決能力の低下が実にリアリティある醜悪さをもって描かれている
②福岡占領の命を帯びて潜入・侵攻してくる北朝鮮兵士の思考枠組みが、歪んだ形で洗練された合理性の恐ろしさを見せ付けている
③日本のマイノリティとして登場する犯罪者少年たちの心象風景(主に支配層・マジョリティへの激しい憎悪・暴力性)が恐ろしい
といったところでしょうか。
合理的問題解決のためのオプションに暴力までも加えて先鋭化された北朝鮮兵士たちの前に、あっけなく屈服していく日本人の姿。そこから感じる日本という国の最大の問題点は、愛国心不足といった抽象的な欠乏ではなく、軍事力不足といった表面的な欠乏でもなく、現状に対する危機意識と問題発見・問題解決のための思考能力を備えた人間が決定的に不足しているという欠乏でした。
ビジネスの世界でも問題解決能力に優れたリーダー人材・経営者人材の不足が叫ばれながら、有効打を放つことのできない企業がほとんどという現状。政治の世界をや、です。企業であれ国家であれNPOであれ、組織を率いるリーダーには共通の資質が求められるはずです。その力を養う機会を、残念ながら日本の教育プロセスは提供できていない(社員教育等も含めて)。
そうした現状に危機感を抱く人々の割合が、徐々に増えていくことを願うばかりです。そうすれば、少しずつではあれ社会というものは変わっていくはずですから。