[読んだこと考えたこと  人生のホップ・ステップ・ジャンプ

以前に読んで、自分のものの見方・考え方にとても大きな影響を与えてくれた『ハイ・コンセプト』という本があります。

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ダニエル・ピンクというアメリカのジャーナリストが書いた本ですが、その世界観・歴史観・未来観は大いに刺激的。曰く、人類は農業社会⇒工業社会を経て、ここ数十年は情報化社会を過ごしてきた。情報化社会では、情報を多く手にする術を心得ている人物や企業が成功を収めてきた、と、ここまでは何度も耳にした事のある「第三の波」といった話。
ところが、インターネットの絶えざる進化が続く現在、情報は誰でもが低コストで入手できるものとなり、その相対的な価値は低下していっている。希少性を失った情報に代わって、今後の世界・人類は何を求め、何を手にする者が成功を収めるのか。その答えが「ハイ・コンセプト」そして「ハイ・タッチ」であると続きます。
そこでのキーワードは「意義」。物質的に豊かになり、また業務のアウトソーシングやIT化によって単純労働から解放された先進国の人々は、単なる「モノ」ではなく、その背後に潜むメッセージ性・物語性に惹かれるようになっている、というのです。まさに、「モノより思い出」ですね。
人々の購買行動においても、単純な機能ではなく、その商品に込められそれを所有することで得られる「意義」を、消費者は求めるようになっている。有名デザイナーのデザインした1個数千円のゴミ箱が飛ぶように売れ、環境に配慮したハイブリッドカーを所有することがリッチ層のステータスになるという時代。より高性能なモノ、より高品質なモノを求めた時代からは一線を画し、そこには明確に「意義」への志向性がある、というのです。
そんな彼と、彼の本の訳者である大前研一氏の対談を聞きました。その中で出てきた「幸せな人生とは?」という質問に対する彼の回答がよかった。
幸福な人生には3つのパターンがある、というのです。1つ目は「愉快な人生」。美味しいものを食べたい、キレイな服を着たい、楽しい思いをしたい、そういった「愉快」を求め、それを手にすることで幸福を感じる人生です。これはこれで悪くないし、実際そういう生き方をしている人はたくさんいる。
2つ目は「良い人生」。自分の持つ能力をフルに発揮して充実した仕事をして、自己実現を図りたい、というもの。自分の持つ可能性にフォーカスし、そこから得られる成功が幸せにつながる人生、と言い換えられるかもしれません。
そして3つ目。それは「意義ある人生」。自分の持つ能力を発揮するという点では「良い人生」と同じだけれど、意義を求める人がフォーカスするのは「他者への貢献」。隣人や社会、ひいては地球といった自分以外の存在に貢献し、そうした人々の発展や幸福を実現することが最大の幸せと考える人生。現代のアメリカや日本には、そうした「意義ある人生」を求めて日々を送る人が少なくないといいます。
自分なりの「幸福な人生とは?」の問いにはもちろん答えは出ないけれど、そうした少し哲学的な問いについての考えを深める際の一つのスパイスとして、ポケットに忍ばせておくといい考え方だと思います。