ふわり、ごくり、じわーん 〜鹿児島の酒〜

芋焼酎、好きでした。鹿児島を旅して、芋焼酎が大好きになりました。
これまでは焼酎を飲むときはロックで、と決めていました。水やお湯で割ってしまうと、本来の味が失われてしまうような気がして。「飲み方は?」と尋ねられて「ロックで」と答える瞬間の、何と言うか潔さ、男らしさみたいなものへの憧れもあったのかもしれません。
鹿児島の地を訪れて、お酒を飲むに至って驚いたこと。それは、鹿児島では焼酎はお湯で割って飲むのが一般的である、ということ。

それも、単なる「お湯割り」ではありません。焼酎:水=6:4(いわゆるロクヨン)で割り、黒千代香(くろじょか)と呼ばれる陶器に入れて火で温める。下から温められて対流が起こり、ちょうどいい具合に酒と水が混じり合う、という仕組みのよう。
特筆すべきはなんといってもその香り。黒千代香とはよく言ったもので、芋焼酎の持つ豊かな香りが温められることで角が取れ、その本来の姿を現してきます。

盃を口に近づけると同時に、その香りが鼻孔を包み込むように優しく刺激してくれます。思わず笑みがこぼれるのはこの瞬間。そして ごくり、と飲み下す。じわーんと広がる温かみとともに、ゆっくりと近づいてくる酔いの足音が聞こえてくるような、そんな気分にさせてくれる。
当然といえば当然ながら、自分用のお土産として買ってきました、黒千代香。さぁ、オトナの時間・晩酌の始まりです。
photo : Nikon D200 with AF-S VR Zoom Nikkor 24-120mm F/3.5-5.6