出城を守っていたら本丸が焼け落ちて・・・

今回の日本での滞在は、主に「本丸」であるところの日本本社の将来に向けた活動という位置づけでした。新しいマーケティング施策の準備、組織強化提案、人材の採用 などに関する活動を集中的に行いました。

タイ事業もまだ軌道に乗ってもいないというのに、その前線を離れて本丸を強化するというのは一見奇異に見えるかもしれません。前線に置かれた出城を放ったらかして、本丸の塀やら石垣やらを強化しようとしているのですから。しかし、海外という「競争の最前線」で戦況と敵情を知れば知るほど、日本という本丸の事業脆弱性を一日も早く何とかしなくてはならないという強烈な危機感に襲われるのです。それが、今回のような出張という形で、また来年からは日本滞在の比率を大幅にUPさせるという形で行動しつつある理由です。

出城が出城として機能して有効に戦を進めていくには、本丸と複数の出城との連携・ネットワークが欠かせません。出城で得られた情報は逐一本丸に伝えられ、対局的な視点でネットワーク全体を生かした作戦が作られ、徹底して実行される。逆もまたしかりで、本丸で得られた大局的な情報や判断はシームレスに出城に伝えられ、現場レベルでの意思決定に反映されなくてはならない。ネットワークのハブに位置するのは本丸で、そこには優れた人材とノウハウと、大きな絵に基づく意思決定機関とが存在しなくてはなりません。

最前線である出城にももちろん有能な指揮官は必要ですが、そこに戦力と資源が集中されていると、どうしても局地戦での視野に引っ張られて偏った意思決定と行動がとられてしまいます。事件は確かに現場で起きているのですが、複数の現場の状況を把握して最適な資源の配分と意思決定をするには、やはり会議室に置かれた参謀本部が必要。出城が本丸に指示したり動かしたりというのは望ましくない。これが僕の考えです。

今僕の目に映っているのは、そんな重要な本丸がハードとソフト両面での研鑽を怠った結果、石垣は崩れかけ、堀は埋まり、武将の士気は失われつつあるという情景です。このままでは、「出城を守っていたら、いつの間にか本丸が焼け落ちていた」という状況になりかねない、そんな危機感が強く僕を支配しています。

クリスマスの頃には、また日本にやってきます。プライベートの重要イベントも控えており、次回の滞在は長期にわたる予定です。本丸の改修工事も、より具体的なフェーズへと進展させていくつもりです。